「就職難」「派遣叩き」「ロスジェネ」「貧困」etc.

 これらの「若者はかわいそう」という俗説には間違いも多いようです。転職エージェント漫画『エンゼルバンク』のカリスマ転職請負人・海老沢康生のモデルでもある海老沢嗣生氏は、著書『「若者はかわいそう」論のウソ』で、「若者の3人に1人は貧しい非正規」「終身雇用と年功序列の崩壊」「ワーキングプアは全労働者の4人に1人」などはすべてウソだと紹介しています。

 そのウソの一つにNHKの『クローズアップ現代』が挙げられています。公共放送であり、ドキュメンタリー番組であり、一種のジャーナリズムであるこの番組は、他のワイドショーや一般週刊誌よりも真実を追求する姿勢が問われるはず。しかし、全体像の精査をせず、「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」など「かわいそうな若者」ばかりを次々とクローズアップしました。挙句の果てに、「若者の都会での孤独な飢餓死」まで取り上げはじめた。2009年10月7日放送の「"助けて"と言えない〜30代に何が〜」がそれです。

 北九州で39歳の男性が餓死しました。誰にも助けを求められず、公的機関にまで見放され、最後は家族とも連絡をとらなくなり、結果、餓死。手紙に残された「た・す・け・て」という4文字。全体を通してこうした悲惨な事件が最近増えているという印象を視聴者に与えたのです。

 コメンテーターとして登場したのが、芥川賞受賞者である若手小説家の旗手、平野啓一郎氏。氏自身には「若者はかわいそう」論とは関係のないしっかりした主旨があったのに、番組で使われる言葉は「団塊ジュニア世代の悲哀」「超就職氷河期世代」「非正規雇用の増大」「格差」......といったものばかり。

 確かにこの話は悲惨で、どうにかしなければならない内容ですし、もちろん対策も必要です。しかしそれは「この世代・この時代」のみにあることではないのです。人口動態統計から、「餓死者(死因・食料の不足)」の数を年度別に調べると、最近、餓死者が増えているという傾向はまったく見てとれません。

 そして、番組に登場する「彼」は正社員として職に就き、その後非正規として転職を繰り返しますが、途中リーダー職となるなど、非正規から立ち上がるチャンスもあったのです。

 この「いつの時代にでもある悲惨な話」をパッチワークし、「この時代・この世代の問題に矮小化」するというのが多くの「若者はかわいそう」論の構図なのかもしれません。



『「若者はかわいそう」論のウソ』
 著者:海老原 嗣生
 出版社:扶桑社
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