【雅道のサブカル見聞録】パクリ騒動から考えるラノベの未来

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 電撃文庫から刊行されたライトノベル『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』が他のライトノベル作品からのパクリ疑惑で回収、絶版となる事件があった。同作品はライトノベル界の新人作家登竜門である電撃小説大賞で最終選考作品に残ったもの。ライトノベル界では権威の同賞であるのに、なぜ選考の段階でパクリの疑惑がある箇所に気づかなかったのだろうか。

 似たような事例としては、数年前に携帯小説で優秀賞となった作品がPCゲーム『クロスチャンネル』のパクリと発覚し作者が受賞を辞退した事件があるが、これは元々ジャンルの違う作品からのパクリ。今回は同じジャンルに区分される作品からのパクリ疑惑である

 ある出版社で公募の作品の下読み経験もある作家のA氏は語る。「90年代は、ライトノベルに対する評価は低く、軽く見られていました。他の文芸作品の選考のように、一次選考時にある程度の経験を持つフリーの編集者やライターに一本に数千円程度で依頼するのではなく、ライトノベルの場合はその辺の文学部の学生が、一本数百円で最終選考の直前まで下読みをやる場合がありました。その頃からパクリっぽい作品は結構ありました。ある時、某出版社の編集者が、持ち込みとして郵送された作品を持ってきて、“こいつは天才だ”と騒いでいたので原稿を読んでみれば、スタジオジブリの某作品に酷似していて、僕の指摘で、賞を与えようとしてた所をギリギリで阻止した事も。当時は他のラノベやアニメとかマンガをチェックしていなかった下読みや編集者が多かったですね。今はライトノベルを取り巻く状況も変わっているので、こんなお粗末な事はないはずなのですが、今回のような事態になったのは各出版社から発行されているラノベの作品点数が多すぎて編集者が把握しきれていないからではないでしょうか?」。確かにA氏の言う通りここ数年のライトノベル市場拡大は目覚しく、00年代後半に入ってからGA文庫(ソフトバンククリエイティブ)、ガガガ文庫(小学館)、迅社文庫(一迅社)など様々な出版社がライトノベルに参入している。シリーズ化されている有名作品だけの把握でも大変だろう。

 ただ、川端康成に影響を受けたガルシア・マルケスが、村上春樹の文体や世界観に影響を与えるように、多少のオマージュというのはどこにでもあるはず。もちろん今回の件はパクリだったのだと思うが、最近の過剰なまでの動きは“○○に影響を受けた”という作品までネットの過剰な反応によって摘み取ってしまう危険性を感じてならない。

 ネットの発展とラノベ注目度上昇に伴い、パクリと思われる箇所が見つかればすぐに比較として本文がアップされるケースも多い。もしかしたら、以前はパクリだとしても見逃されていたものも多かったのかも知れない。今や有名作品発行部数は普通の小説を超える部数となっている。このパクリ騒動もラノベが巨大な市場になってきたからゆえの出来事だろう。これから読者の監視の目が強いものとなっていく中で、それがライトノベル界にとってはプラスとマイナス、両方の可能性を秘めているような気がする。(斎藤雅道)

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