世の中にはたくさんの職業がある。
 サラリーマンといっても、営業、宣伝、経理、人事・・・たくさんの職種があるし、当然仕事内容も様々だ。働いていれば時には、“もし、違う職業を選んでいたら今頃は・・・”と、現実とは異なった人生を空想することもあるだろう。そんな空想の手助けをするのも小説の役割の一つ。というわけで、今月は小説に登場する「なりたい職業」をランキングする。今月の5冊はこちら!

◆『パイロットフィッシュ』(大崎善生/角川書店)
◆『サニーサイドエッグ』(荻原浩/東京創元社)
◆『君たちに明日はない』(垣根涼介/新潮社)
◆『神去なあなあ日常』(三浦しをん/徳間書店)
◆『アンチノイズ』(辻仁成/新潮社)

5位
◆『君たちに明日はない』(垣根涼介/新潮社)

職業【リストラ請負会社のクビ切り面接官】(あらすじを読む→)
 日本ヒューマンリアクト(株)は従業員15人、クビ切りのプロフェッショナルだ。依頼された企業のリストを元に、リストラの候補者と面接をして、退職に追い込むのが仕事。候補者の人間性や仕事ぶりを調査し、相手の弱みを突く。主人公の真介は相手のその後を考えた上で、面接をするが、時にはリストラされた人から恨みをかうこともある。

4位
◆『サニーサイドエッグ』(荻原浩/東京創元社)

職業【探偵】(あらすじを読む→)
 私立探偵。ペット捜索の依頼ばかりくるが、決してペット専門の探偵ではない。「サニーサイドエッグ」では猫を捜索する。尋ね猫のポスターを電柱に貼り、ポスティングをし、近隣に聞き込み調査もする。逃走したと思われるエリアの家々のすき間を覗き、植え込みをかきわけ巡回する。変質者と間違われる怖れもあるため、名前を呼んだり、怪しい人間ではないことをアピールしなければならない。

3位
◆『パイロットフィッシュ』(大崎善生/角川書店)

職業【アダルト雑誌の編集者】(あらすじを読む→)
 作っている雑誌は「月刊エレクト」。直訳すると「月刊勃起」という凄まじいタイトルだ。読者に何らかの興味を持たせて、本を買ってもらうのが本作りというものだが。「勃起させて売る」という単純な図式でもそれはなかなか難しく、それだけに面白いし勉強になる。編集者3人で、企画、校正、原稿書き、写真のレイアウトや時には写真撮影までこなす。

2位
◆『アンチノイズ』(辻仁成/新潮社)

職業【騒音の苦情調査】(あらすじを読む→)
 役所の環境保全課の職員であり、騒音の規制や取締りをするのが主な仕事。街を歩いて騒音測定器で街の音を測ってまわる。そして測定値をノートに記して、移動して、また測定する。「農家で飼っている鶏の鳴き声がうるさくて眠れないから取り締まってくれ」という苦情が住民から寄せられ、住民と農家の主人の板ばさみに合うこともある。

1位
◆『神去なあなあ日常』(三浦しをん/徳間書店)

職業【林業】(あらすじを読む→)
 主人公の勇気が勤めるのは従業員20名の中村林業株式会社。主な仕事は、近隣の民有林の間伐や、おやかたさんである中村家が所有する山の手入れ。勇気の仕事は中村家の山を専門に手掛けている班だ。そこで植えつけから搬出までの作業をする。雪を払って、幹がまっすぐなるように固定する「雪起こし」、余分な枝を切る「枝打ち」など仕事内容は様々ある。

▼総評
 5位は、『君たちに明日はない』のリストラ請負会社のクビ切り面接官。小説の主人公である村上真介は、相手の今後を考えた上でうまく面接をするようだ。だが、私は口下手な上に余計なことを口走って、余計に面接者を怒らせてしまいそうなのでこの仕事は勤まらなそう。なので最下位。
 4位は、『サニーサイドエッグ』の探偵。最上探偵事務所への仕事依頼は、主にペットの捜索。家々のすき間を覗き、植え込みをかきわけ捜索するため、空き巣狙いや下着泥棒と間違われ、年に数回は通報される。下着泥棒には絶対間違われたくない…4位。
 3位は、『パイロットフィッシュ』のアダルト雑誌の編集者。とても面白そうな仕事だ。月刊エレクトの編集部は人数が少ないから、企画、撮影、編集など雑誌作りの全ての工程を手掛けることになるのでやりがいもあり、楽しそう。嫌なところはないが、1位と2位の職業がかなり魅力的だったので3位。
 2位は、『アンチノイズ』の騒音の苦情調査。騒音測定器で街の音を測ってまわり、測定値をノートに記して、移動して、また測定する。かなり地味な作業なのだが、性格的にピッタリくる人は案外多いのではないか、私も含めて…2位。
 そして1位は、『神去なあなあ日常』の林業。地面から7、8メートル上での作業、花粉症、ダニ、ヒルなど自然相手の仕事なので大変なことも多いが、季節ごとに仕事内容が変わるなど大自然で働く醍醐味がある。主人公・勇気の先輩であるヨキは伐倒の達人だ。指示どおりの角度に杉を斧1本で伐倒することができるのは、まさに職人芸といえる。これをできるようになったら爽快だろう。

 今月の5冊に登場する林業や探偵など、その職業の名前は聞いたことはあるだろう。
 中には一見地味な仕事もあったが、端から見たら地味でつまらなそうな作業でも、自分だけのやりがいや楽しみを密かに持って仕事をしていることもあるし、その逆もある。結局は、その仕事をしてみないと本当の楽しさやつらさは分からないのだが、小説を読んで様々な仕事を空想して見るのは、楽しいだけでなく、案外実用性がある遊びなのかもしれない。
 いつか転職など、人生の岐路に立った時、こういったとりとめもない空想ほど思い出すことは多いものだ。
(新刊JP編集部/田中規裕)

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