男に伍して女が働くことなんて、今では珍しいことではなくなった。どんな職業にも女性はチャレンジしている。
『トッカン 特別国税徴収官』は税金滞納者からお金を取り立てる、嫌われ者の徴収官になってしまった新米税務署員、鈴宮深樹の物語である。よくあるお仕事系ライト小説かと思いきや、これがずしんと読みごたえのある重量級。嬉しい裏切りを経験した。
 トッカンとは、特に悪質な脱税を担当する係官だ。言葉に詰まると「ぐっ」ということから「ぐー子」と呼ばれる深樹の上司は、そのトッカンの鏡雅愛。京橋税務署管内で脱税者とトッカンとの知恵比べが始まる。資産家マダムの家、流行のカフェ、貧しいプラスチック工場と納税の義務を説きつつ、ときにはS(差し押さえ)に踏み切る日々。しかしぐー子は脇の甘さから、ある罠に嵌まっていく。
 消費税値上げ問題が喧しい中、税金を払いたくないのは当然でも、国民の義務は果たさねば。こんなことを真剣に考えさせられる小説は初めてかもしれない。

(東えりか)







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