アルゼンチンのスタメンは、ロメロ、デミチェリス、ブルディッソ、オタメンディ、エインセ、マスチェラーノ、ディマリア、マキシ、メッシ、イグアイン、テベス。メッシをトップ下に配置することで、チームのバランスが一気に改善した様子。メッシに得点が生まれないことが盛んに報道されているようだけど、いわゆるシャビの仕事を代表ではしているので、しょうがない。

 メキシコのスタメンは、ペレス、サルシド、ロドリゲス、オソリオ、マルケス、トラド、フアレス、グアルダド、エルナンデス、ドスサントス兄、バウティウタ。バウティスタが初スタメンらしい。謎の大抜擢。ギジェでいいじゃないかって気もするけれど、どんな選手なのだろうか。開幕前に注目されたベラは完全に蚊帳の外状態になっている。個人的に注目しているバレーラも全然出てこないぞ。

 ■自分たちのサッカー

 アルゼンチンのシステムは4-3-3。メッシがトップ下に位置している形である。守備の時は、4-3で自陣に引いて守備ブロックを形成。前線の3枚は攻撃に備えている。しかし、メキシコがDFラインから攻撃を組み立てるときは、激しい前プレでボールを奪いに行く場面が多く見られた前線トリオ。ただし、中盤の選手が前プレに連動することを優先していなかったので、迫力のわりにボールを奪える回数は少なかったと思う。後方に守備に戻らなくてもいいから、前にある時は激しく寄せようねって決まりだったのだろう。

 メキシコのシステムは4-4-1-1。序盤は3バックに見えたが、徐々に4-4-1-1でアルゼンチンにボールを持たせる場面が見られるようになった。エルナンデスとバウティスタが中央に陣取ってアルゼンチンの攻撃をサイドに誘導するような仕掛け。しかし、このふたりがそこまで守備を熱心に行わなかったので、アルゼンチンはDFラインでサイドを変えて攻撃をする場面も見られた。バイタルでメッシたちを止めることが出来ていたけど、メキシコからすれば、もっとアルゼンチンの攻撃機会を減らせると考えていたに違いない。

 ボールを持たされたアルゼンチン。序盤はいい形で前線にボールを届けることができなかった。困った時のメッシとテベスのドリブルボール運びも、メキシコのマークをなかなか剥がすことができなかった。ディマリアとマキシも、無理のきくプレーがなかなかできなかった。なので、ボールを奪われてメキシコにカウンターを許す展開のアルゼンチン。アルゼンチンからすると、決して歓迎するような立ち上がりではなかった。

 アルゼンチンが前線に選手を残しているので、メキシコは多人数による攻撃の迫力がいつもよりも少ない印象であった。それでも、素早い攻撃から惜しい場面が続いていくメキシコ。サルシドの強烈ミドルやグアルダドのシュートは紙一重の場面だった。しかし、ロメロが地味に安定感のあるセーブで試合を成り立たせる。このあたりは、メキシコもカウンターが怖くて、ちょっと安全な攻撃をしていたのかもしれない。そんな様子見の序盤戦。もちろん、アルゼンチンも黙っているわけはなく、メッシとテベスが個人能力でチャンスメイクやフィニッシュまで持って行くから恐ろしい。でも、メキシコは多人数による守備によって、アルゼンチンの攻撃を効率よく防いでいった。

 試合が動いたのは意外な形であった。前プレでメキシコに圧力をかけるアルゼンチン。アルゼンチンは相手のDFラインからのクリアーボールを跳ね返す→メッシにいい形でボールが渡り、メッシが中央突破。テベスのシュートを演出し、こぼれだまをループ気味にゴール前に贈ると、テベスが頭で押し込んで、アルゼンチンが先制する。今までいい形でメッシにボールが入らなかったのだけど、競り合いから良いボール入るとはって感じ。

 しかし、リプレーを見ると、テベスが完全にオフサイドの位置にいる件について。イングランド戦の誤審は副審が追いつけないので、まだ気持ちがわかるけど、これは見逃してはいけない状況だなと。むしろ、主審が独断でオフサイドをとっても良かったんじゃないかなってくらいにオフサイドだった。審判にも勇気が求められるね。メキシコは必死に抗議するんだけど、実ることはなかった。せっかくの大舞台でこれは痛いメキシコ。

 メキシコに広がる動揺と、焦る必要がなくなったアルゼンチン。アルゼンチンは無理に縦パスをいれないで、ピッチを幅広く使った攻撃をするようになる。これをメキシコの前線の選手が邪魔する予定だったのだろうけど、機能しなかったことによる誤算。なので、ボールを前線に入れられてしまう形がさらに増えるメキシコ。ディマリアとエインセの仕掛けが形になり始めたのもこの時間帯くらいであった。

 で、そんな中で鬼プレスが実った瞬間。イグアインのプレスによって、たぶんオソリオが中途半端なプレーになってしまう。ボールを奪ったイグアインはGKをかわして、メキシコをどん底に落とす追加点を決める。レアルのエースと表現するのは違和感のあるイグアインだが、今大会で得点王になりそうな勢いである。もう彼を軸にしてもいいかもしれない。でも、強豪との試合でなかなか得点を決められないんだよな。

 気持ちを切り替えるんだメキシコってことで、サルシドが反撃の狼煙を上げる。しかし、やっぱりいつもよりも攻撃の枚数が少ないようなメキシコ。アルゼンチンは4-3で守っているので、サイドから延々と攻撃を繰り返していけば、楽しいことになりそうなのだけど、前線の選手がサイドに流れないので、単発な攻撃。よって、ミドルを連発したり、遠目からのクロスだったりで、お茶を濁すメキシコ。エルナンデスがクロスに飛び込んだ場面は惜しかったけれど。

 後半になると、メキシコは前プレを強めにかけることで、アルゼンチンに試合展開を早めるようにプレーするようになる。2点差なので当たり前の判断。そして、後半の頭から、バウティスタ→バレーラ。ドリブルの上手いバレーラをサイドで起用することで、サイドアタックを強める交代である。でも、アルゼンチンに特攻で崩せるほどの選手はなかなかいないだろうと。

 サルシドのミドルをきっかけに、アルゼンチンのゴールに迫っていくメキシコ。バレー等もエンジン全開で左サイドからドリブルで仕掛けを行っていった。猛攻を仕掛けるメキシコだったが、一瞬の隙をつかれる。前半にも見られたように、サイドチェンジから時間を与えられたエインセ。冷静にバイタルのテベスにボールを届ける。ちゃんと複数で対応したメキシコだったが、競り合いのこぼれ球をテベスに弾丸ミドルを叩き込まれて、3-0になってしまう。

 3−0になったよってことで、アルゼンチンはテベス→ベロン。メッシを前線に上げて、ベロンを中盤に入れてきた。ベロンはトップ下ってよりは、マスチェの横にいることが多かった。つまり、4−3の守備を4−4に変更。アルゼンチンらしくないまともな采配である。マラドーナが覚醒したってよりは、まともなコーチがいるのだろう。ライカールト×テンカーテのような。

 しかし、このまま終われるかってことで、中南米のボスは反撃を試みる。サイドに選手を配置するようになったアルゼンチンに仕掛けていくバレーラとサルシドのコンビ。そんな中で意地を見せたのがエルナンデス。ユナイテッドに移籍が決まっているらしい新鋭は、デミチェリスをファーストタッチで振り切ると、ニアに強烈なシュートを叩き込んで、メキシコの意地を見せる。

 その後もメキシコは試合を捨てることなく攻撃を続けていく。しかし、体を投げ出して守るエインセを中心とする堅い守備を見せるアルゼンチンの前に、これ以上の反抗をすることができなかった。まだまだ若い世代に恐ろしい選手が揃っているので、そろそろベスト16の壁をぶっこわすことを期待して終了します。ブラジルでの大会だったら、メキシコは期待できそうな気がする。

 ■独り言

 この試合も切ない誤審によって、試合が動くこととなった。2試合続けての事態なので、審判問題についての議論が活発になりそうである。ビデオを導入したくない気持ちはなんとなく理解できるので、5人制で実験してもらいたいなと。確かEUがその実験の場になったと思うのだけど、評判はどうだったのだろう。

 アルゼンチンは前線ががむしゃらにプレスをかけて、後方は守備ブロックで耐える分断が続いている。スーパーな選手がいるから成り立っている技で非常に危うさを感じるところもある。ただし、オタメンディとエインセを筆頭に守備を重視する選手配置は攻守分断を考えると、いい起用だなと。ただし、こういうチームは11人で攻守に戦えるチームに苦戦する傾向がある。

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