1対21。

 この数字は一体なんでしょう。これは、1人のサッカー選手が強く戦うために大切な心の持ち方を、象徴的に数字で表現したものです。

 サッカーはもちろん、11対11で戦う競技です。しかし、仲間の10人とともに自分はどう動くべきか、そして敵の11人に対していかに攻撃をしかけるか。それを追求したときに、元日本代表の風間八宏氏は、そのなかの「1」にあたる選手1人ひとりに、揺るぎなき「個人力」がなければ、何もなし得ることはできないのではないか、と考えているそうです。

 1970年代から80年代半ばにかけ、「強い個人」を中心に組み立てられたチームが世界のサッカーを席巻しました。ヨハン・クライフ(オランダ)やフランツ・ベッケンバウアー(旧西ドイツ)、ジーコ(ブラジル)、ミッシェル・プラティニ(フランス)といった、戦える「個」が勝負を決する時代でした。

 ところがその後、今度は綿密に計算され尽くした、穴の少ないチームが勝利を手にしはじめます。「チーム戦略」に基づいて選手を各ポジションにあてはめたサッカー。つまり監督の描くプランを90分通して遂行できる選手こそが起用されるというスタイルが、いま現在に至るまで続いています。

 しかし、そんななか"強力な個人力"を持った選手が再びあらわれはじめました。リオネル・メッシ(アルゼンチン)をはじめ、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)、ウェイン・ルーニー(イングランド)、デディエ・ドログバ(コートジボアール)といった選手たちです。

 彼らは相手側のチーム戦略を1人で打ち破ってしまうような、圧倒的な個人技を持った、いわば"規格外"の選手です。人は進化する、というのはサッカーにおいても同様で、彼らはさらにチーム戦略をも自分のものにし、それにのっとったうえで、まばゆいばかりの卓越したプレーを生み出すのです。

 しかし今後、またその強い「個」を持った選手を押さえこむような、システマチックな戦略を武器にしたチームが出てくる可能性も十分あります。まさに、いま開催されている南アフリカW杯でそのようなチームが現れるかもしれません。どのようなチームが世界一になるのか、「個人」と「戦略」の駆け引きも楽しみの一つになりそうです。



『「1対21」のサッカー原論』
 著者:風間 八宏
 出版社:二見書房
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