ビジネス書業界の“現在”を『ビジネス本作家の値打ち』著者・水野俊哉さんに聞く(2)

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 2回にわたりお送りしている『ビジネス本作家の値打ち』(扶桑社/刊)の著者・水野俊哉さんへのインタビュー。

 『ビジネス本作家の値打ち』では、名だたるビジネス書作家の書籍を点数で評価していくという前代未聞の挑戦が行われているが、そこからはビジネス書業界の光と影が見え隠れする。
 より良いビジネス書が生まれる土壌を作るために―今、一番必要なことは何か?

 「ビジネス書を読んでいる読者のために書いた」という水野さん。後半戦となる今回は、その想いを語って頂いた。(前半戦はこちらから
(新刊JP編集部/金井元貴)


◇   ◇   ◇


―水野さんの評価の中では、大前研一さんや橘玲さん、中島孝志さんあたりが安定して高評価を保っていますね。

水野「先ほども話したように、色んな切り口や独自の視点でテーマを設定できる方々なんですよ。しかも量もこなせる。おそらく書かずにはいられなかったり、自分の意見を発表せずにはいられないんだと思いますが、だからこそ読んでいて気持ちいいですよね。
それに、最近のビジネス書は大量生産やフォーマットに則って、ワンテーマで書かれる傾向があります。でも、昔はもっとビジネス書が求められていたクオリティは高いものだったはずです。中島さんなんかは、その昔の水準で書かれていると思うんです。だから、他のビジネス書と比べたときに中身があるように感じられるんだと思います」

―この本には2冊の本に5点という記録的な低評価をつけていますが、その中の1冊、勝間和代さんの『結局、女はキレイが勝ち』は水野さんの評論文に爆笑してしまいました。

水野「これはですね、7月4日に切込隊長さん、中川淳一郎さん、僕の3人でビジネス書に関するイベントを開催するのですが、切込隊長さんがブログで勝間和代さんのことを“E.T.にしか見えない”と評していて、あ、ちゃんとそう思っている人いたんだな、と。だから、なんでみんなそう思っているのに言わないのか、なんですよ。あれだけ仕事術で押してきて尚且つ尊敬されている人なのに、その本はビジュアルで押しているわけじゃないですか。そういう意味で不快になる人もいると思いますし、周囲に止める人はいなかったのかな、と。その前は、胸の谷間が見えるような表紙の本が書店に平積みにされていたわけですよね。『裸の王様』じゃないですけど、セクシー路線はどうなんだろうとか、まともな感覚の意見が飛び交わないのは、変ですよね。
もちろん世の中には好みがありますし、100人のうち数人は好きと言う人もいるかも知れません。でも、自分はそうは思わないという正直な気持ちを書いています」

―最近のビジネス書は小説系、ストーリー形式で書かれているような本も多いですよね。『もしドラ』なんかはベストセラーになっていますし。

水野「そうですね、それも今の1つの傾向だと思います。でも、個人的には小説を冒涜するような本はあまり出さない方がいいと思います」

―それは私も強く思います。ビジネス書と小説で求められているものは違う、という声もありますが、普段小説を読んでいる人がストーリー形式のビジネス書を読むと、苛立ちというかだんだん絶望を覚えてくることもありますね。

水野「もちろん高いレベルのストーリーもありますが、そう多くはないですよね。小説としての最低ラインを割ってしまうと、もう悲惨ですよね。ビジネス書だからいいんだっていうものではなく、同人誌にも載らないようなレベルのものを書籍にして1500円で売ったりするわけですから、誰が不幸だって、読者が一番不幸だと思いますよ。もちろん求められているものは違いますよ。だけど、本という舞台で表現すること一緒ですし、あまりふざけたことをしない方がいいと思います」

―逆にビジネス書全体の評価を下げてしまうことにもなりかねませんよね。

水野「そうなんです。他のジャンルの好きな人から見れば、そういうことによって、ビジネス書がバカにされる原因にもなります。一部のものすごくレベルが低い本のために、全体まで悪いイメージが広まってしまう。それに、『あ、このクオリティなら自分にもできそう』というわけのわからない錯覚をして欲しくないですよね」

―他に最近のビジネス書でいえば、内容のつまった洋書の翻訳本で、「監訳」とか「監修」という肩書きで、具体的にどういう形で本に携わっているのか分からないけど、本に名前がクレジットされることも多いですよね。

水野「商魂たくましい、ということですね。ただ、出版社側も売れないといけないと思っていますから、著名な方の名前を使う、と。少しでも売れて欲しいという願望と、乗っかって自分の名前を売ろうというその利害は一致しているように思います」

―この『ビジネス本作家の値打ち』に点数つけるとしたら、何点をつけますか?

水野「基本的に自分の書籍は高いですね。かなり高い点数だと思います」

―内容もかなり詰め込んでいますしね。ガイドとしてもすごく使える一冊だと思いますし。

水野「心配なのは、一応僕もビジネス書の作家さんの知り合いが多いですから(笑)、人間関係が変わる、何名かは確実に壊れてしまう可能性がありますからね。そこだけは若干心配です。連絡がつかなくなるくらいだったらいいけど、怒らしてしまったらどうしようって思いますね(笑)」

―でも、そこを踏まえて出版した、と。

水野「あとは野となれ山となれです。クヨクヨ考えずにね」

―それは一種の決断ですよね。

水野「それはやはり読者のためですよ。読者の方々に知ってもらいたいから本書を書いたわけで、他の作家さんや編集者の方々ではなくて、読者しか見ていませんから。どれだけ嫌な想いをしたとしても、自分の本を楽しんで待ってくれている人には本当のことを知って欲しいんで、その人たちさえいれば、自分は生きていくことはできるかな、と思います(笑)」

―では、最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

水野「本書の面白さは読めば分かると思います。ブログやメルマガでいろいろ書かれていますけど、自分の目で見て読んで、楽しむのが一番だと思います。それは全てのビジネス書も同じだと思いますね」

―ありがとうございました!


◆イベントのお知らせ
水野俊哉×切込隊長×中川淳一郎ビジネス本作家の値打ち発売記念イベント
 〜カツマーから勉強会ブームまでビジネス本シーンをめった斬り!
日時:7月4日 17:00開場/ 18:00開演/21:30終演 (予定)
場所:TOKYO CULTURE CULTURE
予約5000円、当日6000円(飲食代別途必要)
詳細はこちらから
http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_100614203030_1.htm


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