節約の先に見える幸せ? 新妻のお助けコミックエッセイ『年収150万円一家』

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「日本ホラー大賞短編賞」受賞の小説家・田辺青蛙によるオススメブックレビュー。

 去年の暮れぐらいでしょうか、某所でこういう会話が交わされました。

「SF作家の人と今交際中で、今度結婚するかも知れないんですよ」
「ああ、そうですか」
「変わった人なんですけどね、なんだか気が合うのです」
「相性なんて、そんなもんでしょう。うちもそうやったから」

 それからしばらくして、私は入籍して先月お披露目会を行いました。家事も殆どやったことが無かったような私なので、いろいろと失敗も多いですが、何とかまあ......生きております。さて、そんな日々の生活の中で意外!? と役に立ちまくっている一冊を、今回はご紹介しましょう。

 『年収150万円一家』(著:森川弘子 /メディアファクトリー刊)は、食費は月1万円! 家賃は月6万! で生活、でも年に一度は海外旅行へ行く。そんな生活をしているイラストレーターの奥さんとSF作家の旦那さん、そして娘のコハルちゃんによる生活の記録です。ちなみにこの家族は、別にテレビの企画でこういう生活をしているわけではありません。

 本になった経緯もただ奥さんが、パンの耳で生活している芸人がいることをテレビで知り、それならうちでもやっていると、雑誌「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)で募集している「コミックエッセイプチ大賞」に「パンミミ生活」という作品を送ったのがきっかけだったとか。

 パンの耳生活は、細長いパン耳ではなく、パンの端と端についている四角い切り落としの部分。それにバターを塗って、バタートーストにしたり、チーズやトマトソースを乗せてピザトーストにするのです。四角い切り落とし部分のパン耳は、袋いっぱい入って30円(ランチ約一週間分)。他にもいろんなレシピも書いてあり、手作りでキムチが出来ることも知ったので、私も次の冬に仕込んでみようと思っています。

 内容は節約料理や食材だけでなく、フリマ活用術から、懸賞の秘策まで盛りだくさん。私もこの本を読んで、ネットの懸賞に応募してみたら、諸々のブツが当たりました(ほくほく)。掃除の裏技もあって、窓ガラスは新聞で拭くと綺麗になるのは、本当にやってみたら驚くほどピカピカになりました。柑橘類の皮や、使用済みのティーバッグもお掃除に大活躍中です。

 いわゆる生活の知恵や、これはさすがにやり過ぎでしょうといいたくなるような節約術が、可愛い漫画で綴られている『年収150万円一家』。海外旅行のエピソードやお役立ちも物凄く面白かったので、お役立ち本としてだけでなく、読み物としても十二分に堪能させていただきました。それにしても作中に出てくる3人家族はとっても仲良しで、本当に幸せってみんなが同じことを楽しんですることじゃないかなと思ってしまったり。

 で、私が「SF作家と交際中」と打ち明けたSF作家さんの人が、このエッセイの著者の夫だと後日判明するのですが......。いや、本当に驚きましたね。書店で偶然手に取っただけなのに......意外と世間は狭いもんです。さて、そんなわけで偶然の繋がりの持つ恐ろしさなどについて書かれた、怖いお話の本を次回は紹介したいと思います。
(文=田辺青蛙)


たなべ・せいあ
「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。



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