■ 2戦目

初戦でホンジュラスに1対0で勝利したチリと、優勝候補のスペインに1対0で勝利したスイスの対戦。ともに勝てばグループリーグ突破に大きく近づくことが出来るが、ホンジュラス戦を控えているスイスに対して、3戦目がスペイン戦となるチリの方がより勝利を目指す気持ちが強い試合となる。

試合は序盤から荒れた展開となる。レフェリーが上手く試合をコントロール出来ずに、イエローカードが頻発する。前半31分にはスイスのFWベーラミがラフプレーのためレッドカードで退場となる。これで10人になったスイスはさらに引き気味となる。前半は0対0で終了。

後半になると、チリが多くの時間でボールを支配して攻め込む。何度かチャンスを逃した後、後半30分にオフサイドラインを抜け出たMFバルディビアのクロスを途中出場のFWマルクス・ゴンサレスがヘディングで決め、ついに均衡を破る。終盤にスイスが華麗な連携から同点に追い付く絶好のチャンスを作るがシュートは枠外。

結局、チリが1対0で勝利。2連勝となった。

■ 際どいジャッジ

今大会に限ったことではないが、ワールドカップという舞台でも誤審はある。世界トップレベルのレフェリーを集めているはずであるが、単純なミスジャッジも多く、不可解な判定は少なくない。

この試合ではレフェリングに関して、2つの問題もシーンがあった。1つ目はFWベーラミがレッドカードで退場になったシーンであり、リプレーで見ると、確かに相手に接触はしているものの、レッドカードに相当するかといわれると、かなり疑問であった。一方で、チリの決勝ゴールにつながったオフサイドかどうかのシーンは、リプレーや写真で見ても、オフサイドなのか、オフサイドでないのか、よく分からない難しい判定である。

日本とオランダ戦のMFスナイデルのゴールにつながったFWファン・ペッシーのプレーも、場合によってはハンドを取られてもおかしくはないプレーであったが、どちらともいえるような判定は、サッカーの場合、1試合に何度かある。どちらに転んでも文句を言われるのでレフェリーも大変であるが、イージーなミスジャッジだけは減らしてほしいところである。

■ 南米強し

それにしても、今大会は南米のチームの強さが目立っているが、チリも2連勝。アルゼンチン、ブラジルも2連勝で、ウルグアイとパラグアイは1勝1分け。各チームが2試合を終えて、南米の5チーム全てがグループリーグで首位に立っている。トータルでも10試合で8勝2分け。圧倒的な成績を残している。

今大会は、前評判がそれほど高くはなかった国々の健闘が光っているが、印象としては、これらの守備を重視したチームを相手にしても南米のチームはなんとかこじ開けていくことが出来るが、欧州のチームは強国であっても攻撃が行き詰って苦戦することが多い。

日本も南米のチームを大の苦手としているが、ブラジルやアルゼンチンはもちろん、ウルグアイもパラグアイもチリも出来れば対戦したくはない厳しい相手である。「サッカー偏差値」で言うと、欧州の選手の方が優れているような気はするが、南米の選手にはそういったものでは測れない何かがある。

■ ビエルサ監督

チリの躍進には、ビエルサ監督によるところが大きい。期待されたアルゼンチンのフル代表では思い通りの結果を残すことが出来なかったが、アテネ五輪の金メダル等、実績は抜群であり、一種のカリスマ性がある。

個人的には、「ジーコ監督の後任はビエルサ監督がベスト」と以前のエントリーで書いているので、ビエルサ監督がチリ代表で結果を残せば残すほど、「ビエルサ監督の日本代表監督就任の可能性」が小さくなっていくので複雑な感じもするが、このサッカーは魅力的であり、日本も見習うべき部分が少なくない。

■ チリのシュートが決まらない理由? 

ホンジュラス戦に続いて1対0の勝利。これで2連勝スタートとなったチリ。本来であれば、これでスペインとともに2連勝となって、「2試合を終えてグループリーグ突破」となるところであったが、スペインが1戦目でスイスに敗れたため、3チームが2勝1敗で並ぶ可能性があって、グループリーグ突破は決まらなかった。

チリは、3戦目でそのスペインと対戦。スペイン戦で引き分け以上でグループ首位通過となるが、スペインも必死であり、「2勝1敗でのグループ敗退」という悲惨な結末となる可能性も十分に残っている。

となると、悔やまれるのはホンジュラス戦でも、スイス戦でも、チャンスがありながらも1ゴールのみに終わっている点である。チリのサッカーは運動量も多くて、ゴール前に駆け上がってくる人数も多い非常に面白いサッカーであるが、効率的にゴールは挙げられていない。スイス戦で2点目が決まっていれば、試合を決定付けることが出来ただけでなく、スイスとの得失点差を考えても、グループリーグ突破の可能性が大きく膨らんだが、数的優位の状況にもかかわらず1ゴールに終わった。

■ チリのシュートが決まらない理由? 

それにしても、チャンスの数のわりに、チリのシュートは決まらない。思い出してみると、このタイプの「攻撃的で面白いサッカーをするチーム」は、作っているチャンスの数のわりにゴールに結びつかないケースが意外と多い。オシム監督が率いていたジェフ市原・千葉も、サッカー自体は魅力的ではあったが、チャンスの数の割にはゴールに結びつかない試合が多くて、勝ち点を取りこぼす試合が少なくはなかった。

不思議な現象ではあるが、その理由を考えてみると、

 ? スタミナを消費するサッカーなので、ゴール前のエネルギーを発揮すべき時にエネルギーが残っていない。
 ? 中盤の選手がフィニッシュに絡むことが多いが、本職のフォワードの選手と比べると、フィニッシュでの確実性を欠く可能性が高い。

という点が挙げられる。残念ながら、「どれだけ決定的なチャンスに決められるか?」という確率論でいうと、少ない人数で攻め込んでいく「カウンター主体のフォワードの力に依存するチーム」の方が高くなる傾向にあるということは、何となくデータからも分かる。

本当に「決定力不足」なのか?

■ チリのシュートが決まらない理由?

ただ、これが「正解」とも言い切れない。

こういったチームは、同じような1回の決定機であっても、「決定機の質」が高くなるはずである。同じ決定的なチャンスであっても、GKと1対1になるケースよりも、味方が横にいてパスという選択肢もある「2対1」の方がゴールにつながる可能性は圧倒的に高く、「走るサッカー」イコール「味方の選択肢を増やすサッカー」では、「決定率」が高くなってもおかしくはない。

「1度のチャンスを確実に決めてくれるストライカー」がいれば話は完結するが、残念ながら、そういうフォワードは世界中を探しても見つからない。クラブチームであれは「お金を出してより決定力の高い選手を買ってくる」ということも可能であるが、代表チームでは難しい。それ故に、どのチームもチャンスの数を増やすことで得点の可能性を高められるようチャレンジしているが、そのアプローチも簡単ではない。

「決定力」という言葉は非常に深い。MFジネディーヌ・ジダンのような、フィジカルが強くて、圧倒的な技術を持っていて、かつイマジネーションも豊富な選手が「決定力のある選手」だったとしたら分かりやすいが、MFジダンはそれほど決定力のある選手ではなかった。

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