W杯グループAのメキシコ戦で完敗したフランス代表に対し、翌日の地元メディアは「恥」、「悲惨」といった表現で容赦ない批判を浴びせた。

 中でも痛烈なのは、フランスを代表するスポーツ紙のレキップ。「ホラ吹きたち」という見出しを一面に掲げ、「チーム内に問題はない」、「すべてはピッチで証明する」などと繰り返してきた監督や選手たちに欺かれた国民の失望を代弁した。

 国民が期待を裏切られた、というのは正しくない。大会前の複数の世論調査で、ほぼ半数がグループリーグでの敗退を予想していたほどで、最初から期待は薄かったのだ。W杯開幕前の5試合の結果が、1勝2敗2引き分け、5得点に対し6失点では無理もない。

 前回W杯の準優勝国とは言うが、その2年後のユーロ2008(欧州選手権)では、1勝もあげられず、わずか1得点でグループリーグ敗退を喫したチームだ。それにもかかわらずドメネク監督を続投させた協会にマスコミの批判は高まり、国民の“代表離れ”は進む一方だった。

 その結果はメキシコ戦のスタジアムにも如実に表われた。レキップ紙によると、メキシコからは2万人のサポーターが押し寄せた一方で、フランスのサポーターはわずか数千人ほど。ブブセラの音に「オーレ、オーレ」の大合唱が混じり、フランスは完全にアウェーの立場に追いやられた。

 レキップ紙は、メキシコ戦での不甲斐ない敗北について、「国民は心を痛め、おそらく涙を流した者もいたろう。しかし“レ・ブルー”(フランス代表)はそれにふさわしくない。悲しみも怒りも必要ない。何も与えてくれなかった彼らにはもったいない」と辛辣だ。マスコミを敵視して“報道規制”を敷き、会見では空疎な言葉を繰り返して問題が何もないかのように振る舞い、本質的な解決を避けてきた協会、監督、選手たちに対する意趣返しの反応ともとれる。

 「いまこそ、あらゆる無能ぶりを振り返り、ローラン・ブラン(大会後の次期監督、公式には未発表)の幸運を祈るときだろう」と結んだレキップ紙。ブラン氏の就任によって、6年間にわたるドメネク長期政権で生じた国民、マスコミとの敵対関係が和らぐ可能性は高いが、「幸運」という言葉を用いているあたりに、背後にいる協会の体質が容易には変わらない、という危惧が感じられる。