■ カメルーン戦を終えて

前半41分にFW本田圭佑が挙げたゴールを守った日本代表が1対0でカメルーン代表に勝利した試合から少し経ったが、岡田ジャパンに無関心だったはずの世間一般の人々の関心も巻き込んで、久々に「代表フィーバー」が起こっている。

2008年の北京五輪、2009年のU-17世界大会と3戦全敗に終わる大会が続いていたが、初戦で格上と思われていたチームを相手に見事な勝利。視聴率も40%をオーバーし、人気低迷が叫ばれていたサッカー界だったが、「日本代表ブランド健在」を大いにアピールした。

キレイなサッカーではなかったが、キレイなサッカーだけが評価されるわけではない。むしろ、23人のメンバーが全精力を捧げて一丸となって戦ったことが十分に伝わってきたからこそ、一般の人々の共感を得ることが出来たのだろう。

マスコミの手のひら返しは相変わらずという気もするが、ただ、「手のひら返し」が出来るだけ、まだ救いがあると言える。

■ 日本の勝利を望まなかった人たち

やはりというべきか、カメルーン戦後も、「カメルーンは本調子ではなかった。」、「カメルーンの監督が無能だった。」、「カメルーンの選手のモチベーションが低かった。」、「ゴールシーンはラッキーだった」、「アンチ・フットボールだった」、「こんなにも悲しい勝利があるなんて・・・。」と素直に勝利を評価出来ない人も存在する。

こういった人たちは、日本対カメルーン戦を、日本の負けを願いながら試合を見ていたのだろうか?全く不思議である。

確かにカメルーンは出来は良くなかったが、そもそもとして、「100%の状態のチーム」と「100%の状態のチーム」が真っ向勝負で相まみえる機会はどれだけあるだろうか?ワールドカップでも、普段のJリーグでも、そんな機会は稀であるというか、ほとんどない。

彼らは、すでに、ちっぽけなプライドを保つために、「母国の代表チームがワールドカップで勝利することの喜びを(素直に)味わうことができなかった。」というサッカーファンにとっては、これ以上ないほどの耐えがたき制裁を受けているともいえるが、岡田ジャパンに対して必要以上のネガティブな主張を繰り返すことで利益を得てきた人は、さらなる代償を払うべきだろう。

■ 現実的な戦い

振り返ってみると、5月24日の韓国戦に敗れたことが1つの転機になった。

イングランド戦から、アンタッチャブルな存在だと思われていたMF中村俊輔をスタメンから外し、MF阿部勇樹をボランチで起用。これは、これまでの<4-2-3-1>あるいは<4-2-2-2>からの転換を意味し「ブレている」という評価もあったが、岡田監督の決断がカメルーン戦の勝利につながったことは間違いない。

そもそもとして、「ブレている」という表現はあまり的確ではないと思う。何かの対象に対して「ブレている」としたり顔で評価を下している人がいるが、実際には、その人の評価基準こそが「ブレブレ」であり、どちらかというと、その評価者の目線がブレているが故に、ブレていない対象がブレているかのように錯覚していることが多いと思う。そのため、「ブレている」という表現を使う人は疑ってかかるのが適切だと思うが、「アジアの中の日本」と「世界の中の日本」の立場が大きく違う今の状況では、仕方がない面はある。

「それならば、もっと早い時期からアンカーを使ったシステムを試しておくべきだった。」というのは1つの意見であり、これはもっとも意見ではあるが、アジア予選から同じようなアンカーを使った<4-1-2-3>あるいは<4-1-4-1>を使ったとしたら、ほぼ間違いなく、「守備的過ぎる」という批判が出てくるだろう。アジア予選と世界大会を同じ戦い方でいければチーム作りもスムーズに進むが、現状では、「アジア予選」と「世界大会」は別のチームを作った戦うのが現実的で、遅すぎた感もあるが、方針転換したのは得策だった。

■ 次はオランダ戦?

さて、次はオランダ戦である。

日本代表がワールドカップの初戦で勝利したのは初めてである。オランダが3戦全勝で首位で通過するとすれば、勝ち点「3」のままでも勝ち抜けの可能性は残っている。1分け1敗であっても、勝ち点「4」になればさらに突破の可能性は高まる。もちろん、勝ち点「6」でもグループ3位の可能性はあるが、有利な立場であることは間違いない。

問題は、2戦目がオランダということである。グループリーグの中では図抜けた実力を持つチームであり、勝ち点「1」でも御の字、得失点差を考えると1点差負けでも許容範囲といえるが、カメルーンとデンマークの試合結果も含めて、いろいろなアイディアが浮かんでくる。

まず、カメルーンとデンマークの試合であるが、この試合が引き分けに終わってくれると、日本にとっては非常にありがたいことである。最終節を前に、カメルーンもデンマークも勝ち点「1」のみ。日本がオランダに勝っていれば、2戦目を終了した時点でグループ2位以内が決定する。ただ、カメルーンがデンマークに勝利して、デンマークが2連敗で最終戦の日本と戦うというシチュエーションも悪くはない。もし、日本とオランダが引き分けたとすると、この時点でデンマークのグループリーグ敗退が決定する。

■ 次はオランダ戦?

それでは、オランダ戦の日本のスタメンはどうなるだろうか?

カメルーン戦の勢いをそのままに、同じイレブンで戦うのも1つの策である。また、大一番となるデンマーク戦に全精力を捧げるために、メンバーを落として戦うことも十分に考えられる。FW玉田、MF中村俊、MF中村憲、MF稲本といったサブメンバーも控えている。

個人的には、流れを変えないためにも、カメルーン戦と同じイレブンで試合をスタートさせるのがベストだと思うが、代えるとしたらカメルーン戦でイエローカードをもらっているMF阿部か。同じポジションにはMF稲本もいるが、アンカーのMF阿部を大一番であるデンマーク戦で欠いた状態で戦うことだけは避けたい。オランダのアタッカー陣を考えるとアンカーの位置でファール覚悟で止めざる得ない場面もあるだろう。そこで、カードをもらえない状況のアンカーだと少し不安である。

2000年のアジアカップの日本代表がグループ3戦目のカタール戦でメンバーを大幅に入れ替えたことが思い出されるが、果たして、岡田監督はどういう決断をするだろうか。大会前は「カメルーン戦は引き分けでもOK」という論調だったが、やっぱり、引き分けだと苦しい状況だった。勝ち点「3」で本当に良かった。

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