「職人」に弱い。手先が器用で、決して妥協をせずにこだわりぬく頑固者は「信用できる」と思ってしまうのだ。だから職人のことを書いた本も好んで読む。
『奇人変人料理人列伝』(文藝春秋)は元新聞記者でノンフィクション作家でもある早瀬圭一が、記者時代の豊富な人脈を駆使して、日本各地の名料理人を訪ね、舌鼓をうちつつその味のルーツを探る。池波正太郎や開高健に愛された老舗から、渋谷のど真ん中の有名居酒屋、高級寿司店、ガード下の知る人ぞ知る隠れ家レストランまで、自腹をきって食べ歩く。ただ常連になるだけではなく、馴れ合いにならない程度に話を聞き、お酒を飲み、ゆっくりと味わう。大人にならなくてはわからない食事の楽しみ方だ。
 料理人にも系統があって、師匠から受け継いだ伝統を守りつつ、現代に合うような新しい物を取り入れなくては生き残ってはいけない。頑固偏屈と誠実は背中合わせ。行ってみたい料理屋がまた増えてしまった。

(東えりか)







■ 関連記事
『ナチに翻弄された少女との不思議な縁〜『サラの鍵』』(2010年6月7日14:41)
『インド最下層で続く悪の連鎖〜『レンタルチャイルド』』(2010年5月31日13:23)
『吐き気がするほど具体的な女子高生小説〜『終点のあの子』』(2010年5月25日16:09)


■配信元
WEB本の雑誌