6月4日のコートジボワール戦にも敗れ、日本代表は4連敗という結果で、6月7日に南アフリカへ入った。5月末に韓国戦で敗戦し、スイス入り後は守備の強化に務め、先発の布陣も大きく変わった。

「ある程度カメルーン戦を想定したメンバーの組み合わせになるように考えたい」と試合前日の会見で監督が語り、コートジボワール戦でのスタメンはカメルーン戦スタメンになると誰もが考えた。

 イングランド戦とは違う4−2−3−1という布陣だったが、阿部と遠藤がダブルボランチを組み、長谷部がトップ下に立った先発の顔ぶれはイングランド戦と同様となった。

 開始早々にセットプレーからのオウンゴールで失点した日本は、終始相手に押された状況で試合が進む。エースのドログバが負傷退場し、コートジボワールの攻撃は迫力を欠いていく。

 しかし、イングランドでつかんだ守備への手ごたえもコートジボワールを相手に揺らいだ。一番の問題は球際の弱さだった。1対1での場面で日本選手が勝つことはまれ。多くの選手がしりもちをつく体たらく。ピッチが乾いていたから良いものの、雨が降っていれば、日本選手の白いパンツは泥で真っ黒になっていたに違いない。

「セットプレーでやられただけで、崩された形での失点はない」と監督は言うが、どんな形であれ、失点は失点だ。そして、内容的に圧倒されていたことは試合を見れば一目瞭然だろう。

「強かった」と試合後、選手の多くが口々にそう言ったが、相手とて、大きな大会を前にして万全のコンディションとは言いがたい。もちろん、イングランドよりも調子は上だろうが、それでも100%の仕上がりというわけではないだろう。

「攻撃に厚みを」というテーマで挑んだものの、ゴール前でしっかりとブロックを作られてしまい、崩すこともできなかった。カウンター攻撃を恐れて両サイドバックも上がれない。日本には右サイドバックの内田と中村(俊)が連携する崩しの形があった。しかし、そのふたりが先発からはずれてしまい、それに変わるコンビネーションがない。ボールを奪ってもただ、スペースへパスを出すだけで終わってしまっては、相手を崩すことなどできないだろう。

「ブロックで守ることを選んだから、今までやってきた形がなくなるのはしょうがない。攻撃も守備も両方とも選手が状況にあわせて、臨機応変にやっていくことができればいいけれど、相手のレベルが高くなれば、それも難しい。もっと形を作らなくてはいけないと思う。4連敗という事実をネガティブに考える必要はない。自分たちの何が通用して、何が通用しなかったかがはっきりと分かったという意味では、4年前よりもいいんじゃないかと思うよ」

 後半から出場した中村(俊)が言う。弱い相手とやって勝つよりも、意味ある敗戦だと。

 実際、この代表はW杯出場レベルの国とアウェイで戦う機会がほとんどなかった。世界のレベルから隔離された状態で本大会へ挑むことを考えれば、知らないよりも知っているほうがいい。しかし、本大会初戦まで約10日間に何ができるというのだろうか?

 コートジボワール戦前には、「カメルーン戦を見据えたメンバー」と語っていた岡田監督も、コートジボワール戦翌日には「あれがカメルーン戦のスタメンと決めたわけでは全然ない」と発言を撤回。体調不良などで出遅れていた中村(俊)、稲本など後半に出場した選手の調子も上がってきたこともあり、急遽ジョージで練習試合を組むことになり、相手を探しているという。

 守備的布陣の強化にしても、なぜスイス入り後だったのか、疑問は大きい。世界と日本との差が小さくはないことを監督は認識できていなかったのか? もっと前からトレーニングすることはできたはずだ。そして、守備力の高い選手を多く起用することを想定した23人の選出だったのだろうか? という疑問もある。

「ワールドカップは大会前の3週間のトレーニングですべてが決まると言っていい」と何度も明言していた監督だが、彼のプランどおりに事は進んでいないのではないか? 不安は大きい。

 急遽先発を入れかえたことで、チーム内に漂っていたどんよりとした空気に変化が生まれている。控え組のコンディションが上がり、相手の運動量が落ちたとは言え、多くの控え組が出場した後半、そして練習試合の45分間の内容が良かったことが、彼らの気持ちを高めているのかもしれない。

「何をとるかだよ」

 中村俊輔は何度もそう言った。守備的に行くなら、それを徹底する。耐えて耐えて1発のチャンスを待つのも手だと。攻守どちらもという中途半端な状態で戦えば、傷は大きくなるし、得られるものも多くないのかもしれない。

文=寺野典子