面接の帰路も注意しなければならない。
探偵は転職者の尾行調査で何を見ているのか?

入社志望者の借金は? 素行は? 経歴は本当?
などなど、採用企業が本気でお金をかければ調べられないことはありません。

高額所得者を雇うからこそ、志望者への調査は仔細に渡ります。調査の現場では、果たして何を調べられているのでしょうか?その方法とは一体どのようなものでしょうか?

本シリーズでは、実際にあった入社前調査の実例を、現役探偵が語ります。


探偵は転職者の尾行調査で何を見ているのか?

前回から始まったこの連載、雇用の実態を知って驚いた方も多かったようです。新卒採用とは違い、この超不景気に海千山千の強者を雇おうというのですから、企業側も失敗は絶対に許されないのです。

これから高額報酬を渡そうという人が、実はロクでもない素顔を持っていたというのは、採用担当者にとっても致命的な失態になります。そうならないためにも企業は高いお金を払って「素行調査」を探偵に依頼するのです。

素行調査とは、要するに「尾行」のこと。管理職を採用する際によく取られる手段です。一番多いパターンは、内定後に入社の意思を確認したら、「ちょっと簡単な打合せをしたいので、会社に来てもらえませんか?」と内定候補者を呼び出します。呼ぶのは100%の確率で平日の昼間です。そして担当者はこう言います。「ちょっと外でお茶でもどうですか?」


「ちょっと外でお茶でもどうですか?」

今日は採用候補者のひとりであるAさんが会社近くにあるチェーン店のカフェに連れて来られました。そこには探偵が待ち構えているとも知らず。

探偵が追いかけるのは、担当者がこうして連れ出してきた人物。探偵はこの時点でこの候補者人の名前すら知りません。万が一怪しまれたとしても、Aさんのことを何一つ知らないわけですから、何とでもシラを切ることが出来るわけで、依頼者側にも全く証拠が残りません。

ちなみに調査料金は通常の浮気調査よりもかな〜り安めの設定。裁判資料になるわけでも、報告書が必要なわけでもなく、証拠映像はデジカメの動画で十分となれば、企業の担当者たちもグロス発注の約束とともにかなりの値下げを要求してきます。探偵業界も不景気なので価格も勉強しますし、こうして皆さんに内緒話を披露したりもするわけです。


高い報酬を持ってしても、人の性格は変えられない

結論から申し上げると、Aさんは不採用となりました。彼はパチンコ屋にも寄らず、風俗店のハシゴもせずにまっすぐ業務に戻りました。実はこれこそが、担当者と別れた採用候補者が一番やってはいけないことなのです。

会社に帰ったり、得意先に向かったりした瞬間に探偵は人事担当者に即連絡。翌日には「ご縁がなかったということで」という電話がAさんに入ってジ・エンド。

Aさんは、現在所属している会社を抜け出してホイホイ呼び出しに応じる、責任感もなく帰属意識の低い人物、と結論付けられたのです。そんな人が自分の会社に入った途端に心を入れ替えるはずがありません。高い報酬を持ってしても、人の性格は変えられないことを採用担当者は経験から知っているのです。

平日昼間のアポイントは、ちゃんと有給を取ってから。「外回りの途中に時間を工面して」なんて軽い気持ちでの転職活動は、時間の節約どころか命取りになりかねませんよ!


■著者プロフィール
木島球六(きじま・きゅうろく)(仮名)

大学卒業後、某酒造系メーカーに就職。営業マンとしてそこそこの実績をあげていたが、だいぶ仕事に飽き始めていたところ、ある日ポストに入っていた「探偵募集」のチラシが目に入る。興味本位で探偵事務所を訪問してから早10年。今では事務所で一番のベテランとなっている。年間250本の調査依頼をこなす傍ら、採用責任者として年間50人以上の探偵志望者の面接も行っている。



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