担当M(以下M):ワールドカップ直前になってやっと日本代表も調子を上げてきたようです。

ラモス(以下R):いや、ちょっと待って。確かにイングランド戦ではいい部分もありましたよ。日本らしいパス回しも見られたし、中澤と闘莉王と阿部のトライアングルがすごく効果的だというのもわかりました。でも、それまでの日本が酷かったからよくなったように見えているんでしょう? だってイングランドは特に前半、ケガしたくないという気持ちでプレーしているのがありありと見えてましたよ。そんなチームに善戦したからって、これは本番とはまるで違う。選手たちはきっとわかっていると思うけど、周りが楽観視し過ぎるのはよくないと思います。それに僕はイングランド戦で期待していただけにガッカリした選手がいましたよ。本田は本当によくなかった。

M:素晴らしいシュートも放っていましたけど……。

R:でも1、2本だけでしょう? 本田もコンディションを調整している途中なのかもしれないけど、それにしても走る量が少なかった。あれじゃ周りの選手もボールを渡せないですよ。そんな出来なのに、誰もそれを批判しないというのが一番よくない。

M:確かにメディアで批判記事は少なかったと思います。

R:それが問題なんですよ。みんな次のスターがほしいと思っているのかもしれないけど、本田はまだまだこれから活躍しなければいけない選手。いいところもあるけど、まだ欠点もあるんです。なのに、メディアは批判するとそのあとコメントがもらえないと思っているのか、みんな褒めるばかりでしょう? 厳しい環境でやっている選手は批判も自分の栄養にして伸びるんですよ。選手を及び腰で批評してるメディアばかりじゃ、たくましい選手は育ちません。

M:選手への批判も少なかったのですが、岡田監督に対する批判も一段落しました。

R:もうこの時期に来たら、監督よりも選手の責任が大きいと思います。だから選手たちが自分たちだけでミーティングするとか、そういうことが大切になるんです。ピッチの上で実際にプレーするのは選手なんだから。それなのにまだ岡田監督批判をしているということ自体がおかしい。選手は叩けないのにね。

M:ともかくちょっと明るいムードになったことは間違いなさそうです。

R:これからが大事ですよ。イングランド戦にしてもコートジボワール戦にしても、結局は本番じゃないんだから。緊張感を忘れず、でも固くならないで臨んでほしいと思います。とにかく僕は精一杯応援します。厳しいことを言うのも勝ってほしいから。頑張れ! 日本!!

ラモス瑠偉プロフィール
1957年2月9日、リオデジャネイロ(ブラジル)生まれ。
1989年11月、日本に帰化し、1990年北京アジア大会、1992年アジアカップ、1993年ワールドカップ予選などで日本代表の中盤をリードした。竹を割ったような性格で、厳しく文句も言うけれど、一方で面倒見の良さでも知られている。

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