韓国海軍哨戒艦「天安」が北朝鮮の攻撃で沈没した事件で、両国間の緊張が高まる中、北朝鮮を脱出してきた脱北者でつくる、自由北朝鮮運動連合の動きが活発化している。

 先日は「金正日は嘘をついている」という内容のメッセージをドル紙幣やDVD、小型ラジオなどと一緒に袋に詰め、それをヘリウムガス風船に結びつけ、北へ向けて飛ばす大々的な作戦を開始。ソウルに住む脱北者たちが北朝鮮の人々に呼びかけているわけだが、実はこの脱北者間で今、かなり疑心暗鬼になる事態が起こっている。

「近年、ニセ脱北者がどんどん増えていて、脱北者たちの情報を本国に送っているんです」

 こう話すのは日本で脱北者の支援を続ける元大学教授のカン・ヨンヒ氏だ。

「4月、韓国の公安に逮捕された北朝鮮工作員が、脱北者として入国していたことが分かったんですが、その使命が情報を流すだけでなく、韓国に渡った人たちを暗殺していくというものだったので、多くの脱北者たちが震え上がったんです。しかも、同様の手口で脱北者に成りすましているスパイがかなりいるという話も伝わり、いまや脱北者同士でうかつに親しくもできない状況です」

 逮捕されたニセ脱北者は、深夜に川を渡って中国に入り、脱北ブローカーに金を払ってタイに密入国。ここでタイ当局に捕まって脱北者としてソウルに強制退去されるという、まさに脱北者ルートをそのまま通ってきたことが判明している。

 北朝鮮の対南工作は想像する以上のものとなっているわけだが、カンさんによれば「このままでは日本も危ない」と警鐘を鳴らす。

「このニセ脱北者を追っているのが韓国の公安なのですが、ここは日本の公安とほとんど情報交換していないのです。その理由は"日本の公安は平和ボケしてレベルが低い"というもので、かつて2007年から08年にかけて3回も日本に入国した北の工作員の情報を事前に通知しながら、日本の公安は一度も捕まえられず、韓国公安が仁川国際空港で逮捕したということがあったんです」(カン氏)

 増加したニセ脱北者は韓国で工作活動を続けるが、中にはここから日本に渡り工作活動を展開している者がいるという。ある事情通は「万一、制裁措置に対して北朝鮮が暴発すれば、各国に点在する工作員が過激なテロに走る危険性もある」とも語っている。

 ニセ脱北者を決して隣の国の話だと笑ってはいられない事態である。
(文=和田修二)



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