前回のW杯でMVPを獲得したジネディーヌ・ジダン。現役最後の大会でフランスを優勝の一歩手前まで牽引した活躍は、まだ人々の記憶に残っているに違いない。しかし彼が本格的に調子を上げたのが決勝トーナメントに入ってからだったというのは、忘れている人も多いだろう。フランスは初戦のスイス、第2戦の韓国と引き分け、グループリーグ突破すら危うい状況だった。

 そのジダン氏が1日発売のフランス・フットボール誌に、韓国戦での苦い思い出について語っている。アンリのゴールで9分に先制したフランスは、81分にパク・チソンのゴールで追いつかれた。その直後、苛立つジダンは相手選手を押し倒してイエローカード。警告累積で次のトーゴ戦は出場停止となった。

 そして5分後、ロスタイムに入るとドメネク監督はジダンに代えてトレゼゲを投入する。これに対してジダンは、ロッカールームでドアに蹴りを入れ破壊するほど激怒。のちにライプチヒのスタジアムがこれを“ジダンが壊したドア”として保存したというエピソードがある。

 ジダン氏は4年前のこの出来事を振り返って、「トレゼゲを入れたのはいい。彼以外に誰がゴールできる? でも彼に決勝パスを出すのは誰だ? 私はそのためにいるんだ!」と語り、その直前に自分のパスで1対1になった場面でゴールを外したアンリを下げるべきだったと暗に仄めかした。

 これについてインタビュアーが「ひどい采配だったということですね」とドメネク監督にとって意地悪な質問を向けると、「ひどいどころじゃないよ。私はものすごいフラストレーションを味わったんだ」と監督をもモノともしない激しい内面を垣間見せた。考えてみれば、これほどの選手を配下に置く指揮官の気苦労は並大抵ではなかったろう。そしてこの激しさが、その3週間後に再び爆発してしまうことになるのだった。