渋川春海の足跡を描いた本屋大賞受賞作『天地明察』ってどんな話?

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 学生時代、歴史の授業で何気なく習った、たった1行のできごと。その1行には、当時何かを成し遂げた人の熱い思いが込められている。現代の人と同じように昔の人も、何かを考え、苦悩し、努力し、様々なドラマがあったはずだ。本書の主人公である渋川春海という名も日本史の教科書をじっくり読み返せば、どこかに小さく載っているだろう。2010年本屋大賞受賞作『天地明察』(冲方丁/著、角川書店/刊)はそんな渋川春海という男の生涯の物語だ。

 時は戦乱の世も終わり、文治国家として政治の基盤が固められていく江戸時代初期。この時代用いられていた暦は、宣命暦。採用して800年が経ち、暦のズレが生じていた。このズレを修正すべく、日本独自の暦を作り出すことを託された男がいた。碁打ちの名門に生まれ、碁をもって幕府に仕える一方、算術、天文、暦学などを学ぶ渋川春海だ。

 渋川春海は決してかっこいい主人公とは言えない。おっとりしていて変わり者であり、周りの人からよく叱られる。だが、どこか愛すべきキャラクターなのだ。彼に引きつけられた関孝和、水戸光圀、妻のえんなど多くの人たちの支えがあり、春海は幾度に渡る大きな挫折に直面しても立ち直り、挑戦し続けた。そして22年の時をかけ、日本の改暦を成し遂げる。

 物語の舞台である江戸時代初期は、戦争を知らない世代であり、平和ではあるが、政情は不安定。現代の不況の日本と似ているのだ。作中、「勇気百倍」という言葉が出てくるが、何度失敗しても挑戦し続ける姿勢は、江戸時代を生きた渋川春海から現代に生きる読者に勇気を与えてくれるだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)

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