格付会社の功罪を描いた経済小説が待望の単行本化

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 夕刊紙「東京スポーツ」で今年1月まで連載されていた黒木亮氏の人気経済小説「格付会社」が、いよいよ単行本化し、日経BP社より出版される。
 そのタイトルは『トリプルA』という。

 経済の世界では“魔法の粉”といわれている「トリプルA」―「AAA」とは一体どのようなものなのだろうか。

 その説明をする前に「信用格付け」について簡単に解説せねばならない。
 信用格付けとは、国家や企業が発行する債券や発行体自体の信用リスクを、民間の格付会社が評価する指標のことだ。
 現在、日本にて金融庁から指定格付け機関の指定を受けている企業は日本格付研究所、ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(ムーディーズ)、スタンダード・アンド・プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&R)など5社で、ほとんどが格付けの指標として「AAA(ムーディーズのみ「Aaa」)」を最高ランクとしている。

 つまり「AAA」は、信用力が最も高く、信用リスクが最小限であると判断される債務に対して行われる格付けである。その結果が投資家たちの投資活動に大きな影響を及ぼすため、絶対の公平性や綿密な調査、数値分析が必要となる。
 しかし、結果的に格付けをするのは人間である。人間は必ずミスを冒す。いくら審査システムがしっかりと構築され、弾き出された数字に問題なかろうとも、破綻は数字に表れない部分から起こり得るものであるし、完全な公平性を保つというのも難しい。

 サブプライムローン問題は、それまでの格付会社の権威が一瞬にして崩壊した出来事である。それまでサブプライムローン関連の商品に高い格付けを与えていた格付会社は、問題が発生した時点で住宅ローン担保証券を大幅に格下げしたのだ。
 この出来事によって、格付会社の信用性に対して疑念の声があがりはじめた。

 本作の舞台の中心となるのはマーシャルズ・ジャパンという格付会社だ。
 1984年から現在に至る格付会社の盛衰と金融業界の裏側が、4人の主要人物を中心に描かれる。マーシャルズ・ジャパンはもちろん架空の格付会社だが、作中には実在の企業が多く出てきており、極めて現実に近いストーリーが構成されているのが大きな特徴だ。

 また、本作は経済小説と同時に、現代人に働き方を問いかける側面を持っている。主人公・乾慎介と妻・香、そして娘・華の3人家族のやりとりは我々にとって、他人事ではない。
 香は働きずくめの夫・慎介に「わたしが、いつも考えているのはね…それはね…わたしたちが、死んだあとのことよ!」と言い放つ。障がいを持って生まれた娘の為に、親は何をすべきなのか。

 現代の金融の現場の病巣が分かる作品である。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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