ゴールデンウィークもとうの昔に過ぎ去り、いつもの生活が続く5月から6月。会社や学校に行くのが、面倒臭い…毎日に萎えてしまっている人も多いだろう。
 でも、もし会社や学校がそんな鬱屈とした気分を吹き飛ばしてくれるような楽しい場所であったなら、毎日楽しく通えるのかも…。

 そんなワケで、今月のテーマは『小説に登場する、通ってみたい学校』に決定! 青春小説にはその舞台として学校が出てくることが多いが、そのたくさんの作品から5冊をピックアップし、「この学校通ってみたら面白そうだな」と思う順に独断と偏見をもってランキング付けしていく。今月の5冊はこちら!

◆『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦/著、角川グループパブリッシング/刊)
◆『レボリューションNo.3』(金城一紀/著、角川グループパブリッシング/刊)
◆『2005年のロケットボーイズ』(五十嵐貴久/著、双葉社/刊)
◆『鴨川ホルモー』(万城目学/著、角川グループパブリッシング/刊)
◆『青が散る』(宮本輝/著、文藝春秋/刊)


▼ランク付け基準
 これらの小説は全て学校を舞台にしているもの。その中で、「この学校は通ってみたい!」と思った順にランキング付けをしていく。ちなみに、いずれも青春の甘酸っぱさが楽しめる作品で、学生の皆さんは共感できるし、社会人の皆さんは懐かしい気分になるだろう。

では、ランキングスタート!


5位
◆『2005年のロケットボーイズ』(五十嵐貴久/著、双葉社/刊)
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学校【私立王島電機大学付属王島工業高校】
 略して王電工。偏差値は49.5。鳥人間部は鳥人間コンテストで活躍。元々は不良ばかりの荒れた高校だった。しかし、9年前、大手電気メーカーのカミノ電機社長・神野正嗣が理事長に就任してからは、どちらかといえばのんびりとした学校となる。理事長の息子である通称“ダンナ”こと神野誠は主人公・梶尾信介の1年先輩。この学校は、ダンナと神野家がすべてにおいて学校での力を持っているのだ。

4位
◆『青が散る』(宮本輝/著、文藝春秋/刊)
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学校【大阪府茨木市に新設された大学】
 田圃や農家に囲まれた衛星都市の一角の小高い丘の上に建つ、新設大学。文学部、経済学部あわせて700名の一期生が入学する。校舎はまだ建築中で、4階建ての1号館と、そこから学生食堂へのぼっていく「だらだら坂」があるだけで、他はなにもない。大学の校舎等が全て整う頃には、主人公の燎平は卒業している。燎平が参加するテニス部のテニスコートも入学した時にはまだない。実は作者・宮本輝の出身大学である「追手門学院大学」が舞台である。

3位
◆『レヴォリューション No.3』(金城一紀/著、角川グループパブリッシング/刊)
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学校【新宿にあるオチコボレ男子校】
 高校自体のあだ名は「ジュラシック・パーク」。通っている生徒は「ゾンビ」と呼ばれている。理由は2つ。ひとつは、偏差値が“脳死と判定されてしまう血圧値”ぐらいしかない。学歴社会においては「生ける屍」に近い存在という意味だ。もうひとつは「殺しても死にそうにないから」。体育教官のマンキーこと猿島は民族系大学出身で、脳味噌も筋肉でできている大馬鹿野郎と生徒に思われている。

2位
◆『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦/著、角川グループパブリッシング/刊)
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学校【京都の大学】
 四条河原町、下鴨神社、大学の学園祭…と、京都の街と大学がメインの舞台。学園祭でゲリラ演劇「偏屈王」を首謀している偏屈王、失恋をきっかけに、願いごとが叶うまでパンツを穿き替えないと誓った大学生のパンツ総番長などキャラの濃い学生が多い。

1位
◆『鴨川ホルモー』(万城目学/著、角川グループパブリッシング/刊)
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学校【京都大学】
 京都市内に実在する国立大学。主人公の安倍は京大青竜会というサークルに所属。立命館大学など京都の他大学とホルモーをするので京都大学だけでなく、鴨川、四条烏丸交差点、行きつけの居酒屋「べろべろばあ」など京都の街全体が舞台となっている。大木凡人みたいな凡ちゃん、チョンマゲ頭の高村など、京大青竜会には個性豊かな人物が多い。


▼総評
 5位は『2005年のロケットボーイズ』の私立王島電機大学付属王島工業高校。時間に限りのある学生生活の中で同じ目標に向かって力を合わせて何かに打ち込むというのは、
 とても良い経験になるだろう。だがこの高校は、理事長の息子こと「ダンナ」が権力を持って、学校、生徒を取り仕切っている。彼に逆らうと陰湿なイジメに合うのだ。よくある話ではあるが、あまり気分良くはならない。というわけで5位に。
 4位は『青が散る』。大阪市郊外茨木市に新設された大学。新設校なので校舎や他の施設が全て整うのは主人公の燎平が卒業してからとのこと。新しい大学、新しいサークル…何もないところから自分たちで考え、作り上げていく醍醐味は他の学校では味わえないだろう。それも1つの青春の姿だ。しかし、私は横着者ゆえに、全部自分で始めるよりもあるものに乗っかりたいため、このランクに。
 3位は『レボリューションNo.3』。舞台は新宿にあるオチコボレ男子校。社会に風穴を開けるために結成された“ザ・ゾンビーズ”の友情は、オチコボレ男子校ならではの堅い結束と言える。私自身、高校3年間を男子校で過ごし、男子校の楽しさ、むさくるしさ、何でもありな感じはとてもよく理解できる。もう1度男子校に通いたいとは思わないが「男子校」と聞くと仲間意識が芽生えてしまう。男子校の世界を垣間見たい女性は、本書を手に取って欲しい。
 2位は『夜は短し歩けよ乙女』の京都の大学。作中、大学名は出てこないが、京都、時計台、作者の森見登美彦氏が京大出身ということから、実は「京都大学」がモデルなのではないかと推測できる。実は1位の『鴨川ホルモー』も同じ京都大学が舞台なのだが、こちらの作品の世界には「ホルモー」がないため2位にした。
 1位は『鴨川ホルモー』の京都大学。入学できるほどの偏差値があるかないかは別として、京都の街で学生生活を送ってみたいという憧れが大きいのでこの順位にした。また、『鴨川ホルモー』に出てくる「ホルモー」という競技も面白そう。京大青竜会に入り、ホルモーに打ち込んでみたい。

 男子校や新設大学、関東、関西などひとえに学校と言っても様々だ。だが結局、学校の設備がきれいかボロいか、広いか狭いかなど、その「箱」は通ってしまえば自然に慣れてしまうもの。肝心なのは学校の中身であり、『2005年のロケットボーイズ』のように仲間たちと小型人工衛星を作ったり、『レボリューションNO.3』の彼らのように女子高の学園祭に潜入したりするなど、何かに打ち込めるか、良い仲間と巡り合えるかという部分で学校生活を楽しめるかどうかが決まるのではないだろうか。学校の雰囲気は、教師、学生などそこにいる「人」が作るものだ。
 今、学生生活を送っている人も学生生活が遠い過去の思い出になってしまった人も、母校を思い起こしながら読んでみると、より読書を楽しめることだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)


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