離婚も浮気もしない動物から学ぶこと

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 古くから伝わる民話に「鶴の恩返し」というものがある。
 そのストーリーの中で、鶴は人間の姿になって老夫婦の前に表れるのだが、逆に鶴を愛しすぎて鶴になってしまった老人がいるというのだ。

 鶴になってしまった老人とは一体どんな人なのだろうか。

 北海道釧路市丹頂鶴自然公園。そこには、タンチョウ(丹頂鶴)が自然に近い状態で生息しており、老人はその公園でタンチョウたちとともに人生を歩んできたのである。
 「鶴になってしまった」というのはもちろん比喩表現で、その老人―高橋良治氏は1958年に同公園が開設されて以来、管理者を務め現在は名誉園長となっている。

 半世紀以上をタンチョウと共に歩んできた高橋氏だが、もともとタンチョウはもとより鳥そのものがとにかく嫌いで、タンチョウのエサやりに使ってもらえることになったことを父から聞いたときは耳を疑ったという。
 しかし、その鳥が嫌いという理由も「大好きな馬に迷惑をかけるから」であり、動物を心から愛し優しく接することができる高橋氏は、母親に「あんたがやらなければ誰がやるんだ」とハッパをかけられ、タンチョウの管理人の仕事に就くことを決心する。

 角川書店から出版されている『鶴になった老人』(高橋良治/著)は、タンチョウと共に歩んだ高橋氏の半生がつづられた自伝だ。もちろん高橋氏のストーリーも読みどころだが、やはり詳しく語られるタンチョウの生態は、私たち人間が学ぶことばかりである。

 例えばタンチョウは一度つがいとなったら、相手が死ぬまで二度と浮気をせずに添い遂げるのだそうだ。そしてどちらかが死んだとき、タンチョウは悲しげに鳴き、その死体から一歩の離れようとしない。死体を、身を挺して守るのだ。
 離婚率が高くなり、家族というものが徐々に解体されつつあるという今、タンチョウから改めて家族の大切さを学ぶことだろう。

 一人の人間と、動物の絆。タンチョウから学んだ家族愛の素晴らしさ。そのドラマチックなストーリーを一度読み出すと、最後まで止まらない一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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