クロウリー『エンジン・サマー』に題名だけひっかけたライトノベル系タイムトラベルSF、六塚光『ペンギン・サマー』(一迅社文庫)が出たのは去年の初夏のこと。
 風薫る季節にはペンギンがよく似合う----かどうか知りませんが、今年の5月は、相次いで2冊のペンギンSFが刊行される。
 1冊は、"哀愁の量子ペンギンSF"と銘打つ大西科学の『さよならペンギン』(ハヤカワ文庫JA/発売中)。もう1冊は、街に忽然と出現したアデリー・ペンギンの謎に小学4年生が挑む、森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』(角川書店/5月28日発売)。
 前者は、1500年前から世界を観測しつづけている主人公の相棒(作中では"延長体"と呼ばれる)として、フンボルト・ペンギンのペンダンが登場する(外見年齢5歳のかわいい少女に変身する能力あり)。
 後者は、モリミー長編としては初めて、京都以外の街が舞台。語り手の"ぼく"は、小学4年生といえども観察と実験を重んじる科学者の心を持ち、奇妙な現象の解明に邁進するから、こちらも立派なSF。たとえて言えば、小学生が夏休みにソラリスの海を研究するような話ですね。秘密の鍵を握るのは、おっぱいの大きな"歯科医院のお姉さん"だったりして、小学生男子のドリーム全開です。

(大森望)







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