「表現の限界とは何か──」 DVD『ムダヅモ無き改革』制作陣が挑んだ自由の臨界点

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 小泉が! ブッシュが! ジョンイルが! そして毛沢東が! 世界各国を代表する大物政治家たちが、卓という名のリング上でガチンコ闘牌を繰り広げる!

 そんな前代未聞の麻雀漫画『ムダヅモ無き改革』(竹書房「近代麻雀」連載中)が、なんとアニメになってしまった。

 監督を務めるのは、自主規制も条例も何のその。表現の自由に挑み続ける、日本で一番パンクなアニメ監督・水島努だ。今回は水島監督と、このブッ飛んだアニメの企画立ち上げから完成までを見守り続けた川瀬浩平プロデューサーによる、本作の見どころと制作ウラ話を無修正でお送りします!

──『ムダヅモ無き改革』がアニメになるとは、最初は全く信じられませんでした。しかも、完成した作品は予想以上にとんでもない仕上がりで(笑)。

水島努監督(以下、水島) 「水島さんが受けなかったら、この企画がなくなる」と川瀬さんに頼まれてしまいまして(笑)。ただ、作るからには原作のもうワンランク上のヤバさを出したいとは思っていました。

川瀬浩平プロデューサー(以下、川瀬) 最初は原作の大和田秀樹先生も交えて三人で「和民」で飲みながらで、何となく「東アジアいっとく?」みたいな流れになりましたね。

水島 やっぱり話題性を出すなら、北の将軍様をやるしかないかなと。

──世界各国の首脳がズラリと登場して麻雀で戦うという本作ですが、キャラが立ちまくりでどの登場人物も強烈ですよね。

川瀬 政治家ってエピソードが面白い人が多いんですよ。だから登場人物たちのキャラも立っているんだと思います。

水島 やっぱりキャラが濃くないと、国を切り盛りしていけないんでしょうね。

──例えば麻生(太郎)さんもクレー射撃の選手ということで、作中では暗殺者をライフルで狙撃してみたり。

水島 『ムダヅモ』の中の麻生さんは、カッコいいですよね。ああいうカッコいい政治家がもっと出てきてほしいです。キャラの立った政治家が上でグイグイやってくれるといいなと思いますね。

──鳩山首相の口から金星人が出てきて、宇宙からの侵略者であるミユキに操られていたっていうエピソードもすごい発想ですよね。

水島 だったらいいなって願望です(笑)。僕も大和田さんのシナリオを読んで、「だからか!」と全てのピースがカチッとはまったという感じです。

──そういった一連のシーンに政治的な意図は全く込めていないのでしょうか?

水島 込めていないです。『ムダヅモ』を作る時に自分の中で決めたルールが二つあって、ひとつは政治的な意思を出さないということ、もうひとつがナショナリズムに走りすぎない。つまり、「日本はこんなに素晴らしい」という方向にいかないということです。それよりも、戦う男たちの暑苦しい国境を越えたカッコよさを出すように気を付けました。

──作品が発表されてから、周囲の反響はいかがでしたか?

水島 いろいろな人から反響がありまして、「本当に大丈夫なの?」「拉致られないの?」みたいな心配ばかりされました(笑)。でも、圧力も批判も特になかったんです。みんな思った以上に大人だったんじゃないのかな?

川瀬 最近はネット上の小さな声も必要以上に大きく取り上げられてしまう。それがきっかけとなって問題になるなら、(過激な表現を)やめちゃおうっていう考え方がとりわけテレビでは顕著だと思いますが、それだとやっぱり作品は面白くならないと思います。特に今回は、せっかく水島さんを使うのならそれくらいの覚悟をもって追求しないといけないなと思っていました。

水島 それに本物の大物だったら、こんなところで何かやってても、「それがどうした」って思うはずですよね。

川瀬 だから鳩山さんに関しても、何も気にしてませんでした。むしろリリースする時に私人になっていたという点で、小泉(純一郎)さんや太蔵(杉村)さんとかの方が危ないと思いました。公人はいくらいじっても大丈夫なんですけどね。

──表現の限界に挑戦しているという感覚でしょうか。

水島 そんなに大層なもんじゃないです(笑)。

──表現ということでいくと、東京都の条例の件をはじめとして自主規制の縛りがが年々が強まってきつつあるように感じますが、ヤバいネタに挑戦している水島監督としてはどう感じているのかお伺いしたいのですが。

水島 実は、自分は取り締まれるものなら取り締まってもいいよってスタンスです。それに多少制約あった方が燃えるんですよね。燃えるというか、制約があるからこそアイデアが生まれるという風に思っています。日本のアニメだっていろんな制約があるからさまざまな作品が生まれてきたわけで、制約が増えることについては特に何も思わないです。まあ怒られたら怒られたで、全力で謝る準備はいつでもできています(笑)。

──視聴者としてはここが一番気になるところだと思うのですが、続編が作られる予定はあるのですか?

水島 政治ネタということで、タイミングがなかなか難しいんですよね。それに北を超えるネタというと、ミドル・イーストあたり? あっちの方にはいきたくないなあ。怖いなあ?。

川瀬 ただこの手のギャグって、エスカレートしていかざるを得ないんですよね。そうなってくると、禁断の地に足を踏み入れないといけなくなってくる。でもそれが面白いかというと、必ずしもそうではない。

水島 その結果、1巻よりも下回る内容ならば作る意味がないと思います。おかげ様で思ったよりは売れてくれているのでたぶん出せるのではないかな? とは思いますので、ご期待ください。

──では最後に、『ムダヅモ無き改革』の「ここが見どころ」というのを教えてください。

水島 みんながよく知っている人たちが、よく知っている麻雀を熱くうっている。そのバカバカしいけど清々しい、「熱い思い」を受け取ってほしいですね。政治家の写真と合わせてみてもらったら面白いと思います(笑)。
(取材・文=有田シュン)


『ムダヅモ無き改革−The Legend of KOIZUMI−』
デラックス版:5,040円(税込)GNBA-1589
通常版:2,940円(税込)GNBA-1599
発売/ジェネオン・ユニバーサル

【デラックス版特典】
封入特典/スペシャルCD
・「ムダヅモ無き改革」オリジナルサウンドトラック
・テーマ曲
 「ムダヅモ無き改革〜勝利の闘牌ジュンイチロー〜」
 歌:小泉ジュンイチロー(森川智之)
映像特典/激突!麻雀大会(轟盲牌禁止ルール)
 (出演:大和田秀樹、水島 努、玄田哲章、伊藤静)
音声特典/オーディオコメンタリー(大和田秀樹×水島努)

【通常版との共通特典】
大和田秀樹描きおろしジャケット
・各国首脳ブロマイド(5種類の内1枚封入)



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