欧州中央銀行(ECB)が国債買い取りを決定したことで、いったん落ち着きを取り戻すかに見えたギリシャ問題。「ユーロ圏共通予算」という最終的な解決策にはほど遠いようです。今後注意すべきポイントをまとめてみました。(バックナンバーはこちら

■ギリシャを救済できないドイツ、フランス、IMF

 5月7日、ギリシャ救済策をめぐるユーロ圏首脳会議が開催されました。報道では、合意に難色を示すドイツメルケル首相に対し、フランスのサルコジ大統領が机をこぶしで叩き説得したと伝えられました。

 ドイツでは、5月9日、最大の地方選挙であるノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙が行われ、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟の与党側が敗北しました。ドイツ国民のギリシャ救済策に対する厳しい態度の前では、そう簡単に譲歩するわけにはいかないという事情があります。

 一方、メルケル首相を説得したと伝えられたサルコジ大統領ですが、こちらも余裕はありません。支持率は就任以来下落傾向が続いています。ユーロ圏の盟主を自負し積極的な発言を行って来ましたが、国内での失業問題など内政問題で失点がかさみ、外交で得点をあげる必要に迫られているのが実情です。

 ギリシャ救済計画の中心である国際通貨基金(IMF)にも圧力がかかり始めています。17日、米国上院は、IMFが加盟国に行なう支援について、融資対象国からの返済の見通しが不透明な場合には反対するという法案をほぼ全会一致で可決しました。国際的な金融危機に唯一柔軟に対応出来ると思われていたIMFに、今後大きな圧力がかかり行動が大きく制約されることが予想されます。

 ユーロ圏の盟主であるドイツとフランスがこのような状況であることから、ギリシャ危機を解決する最終的な方法である「ユーロ圏共通予算」の実現は遠い将来のことのように思えます。また、、融資の主役であるIMFは加盟国から圧力がかかることから、今後の大きな役割を果たすことはあまり期待できません。市場はこれらの状況を理解し、将来のユーロ圏解体に備えてポジションを構築しているようです。

■財政赤字の削減と景気悪化

 ギリシャでは、賃金削減や年金カットに反対する公務員によるデモが行われるなど、緊縮財政に対する国民の不満が高まっています。

 そんな中、ギリシャ議会は5月6日に財政再建法案を可決しましたが、財政再建は1年限りのものではなく長期にわたるものなので、どれぐらい長期間国民が緊縮財政に耐え、政府が国民からの信認を得続けることができるかが焦点となります。

 また、財政赤字を削減するということは、政府支出の削減と増税の組み合わせになりますので、国内の景気は間違いなく悪化します。これはギリシャだけの問題ではなく、同様に歳出削減案を出したスペインやポルトガル、ユーロ圏をはずれてイギリスや日本なども同様です。

 サブプライム・クレジッドバブルの崩壊で、需要が大きく落ち込み経済に大きな穴が空いてしまいました。その穴を埋めてきた政府支出が削減されるということで、市場、特に株式市場は、景気の悪化を折り込みつつあります。

■ムーディーズの格下げはどこまで?

 4月23日、米格付け会社のムーディーズは、ギリシャ国債の格付けをA2からA3に引き下げ、さらなる格下げを検討していると発表しました。5月14日にも同様の発表を行い、ギリシャ国債の数段階の引き下げを検討していることを明らかにしました。

 格下げが起こると具体的には何が問題になるのでしょうか。(次ページへ続く)


課長 今調査役[著]

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