5月10日、太田出版からひとつのカルチャー・マガジンが誕生しました。雑誌名は『リバティーンズ』。自由人という意味のその紙媒体は、「混沌とする現在の中で、自由に思考するための現在進行形の教養を伝える雑誌を志す」とあります。
 
 この出版不況下で、あえて創刊された『リバティーンズ』には、既存誌とは異なる体制と考え方で、新たなメディア・ビジネスのあり方を追求しているようです。まず、固定費のかかる編集部を持っていない(フリーランスの集合知?)。裏表紙は広告スペースにせず帯がつく(まるで書籍みたい)。ウェブも立ち上げ、こちらではデイリーでニュースを配信(何のために?)。

 この雑誌の編集長は、『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』などの編集長を務めてきた管付雅信さんと、博報堂ケトルCEOで『LOVE書店!』の編集長などを務める嶋浩一郎さんのふたり。この時代に、あえて紙媒体を創刊するふたりは一体何を企んでいるのでしょうか?

 その目論見は、4月に発売された『編集会議〜日本の編集長100人』の座談会で垣間見ることができました。「電子出版時代、編集の役割はこう変わる!」と題されたこの巻頭座談会では、前出の2人と通称・IT界の仕掛け人で『FREE』の監修も務めた小林弘人さんが、電子出版時代だからこその紙媒体の役割について語っているので、いくつか拾い出してみます。

・人格を形成するような手元に長く置いて咀嚼していくべきものは紙媒体の力が強い(小林氏)
・広告視点からみると紙はチャンス。今は広告がコンテンツ化したり、広告の評価基準も昔と変わってきて、メッセージの伝わる深さが重要になっている(嶋氏)
・『リバティーンズ』はヨーロッパのインディペンデントな雑誌が一つの雛型。というのも、それらの良質なインディペンデントな雑誌は、出版社ではなくクリエイティブエージェンシーやデザイン会社が手がけているケースが多い。その利点は、雑誌が本業のブランディングにも使えること。つまり、雑誌が人やネタを集めるいい口実になって、お互いの相乗効果を高めることにつながるわけです(管付氏)

 また、小林さんはこんなことも言っています。

・オンライン化と出版不況は関係ない。ツイッターのつぶやき効果で古本市の本が1万冊売れたりするし、紙だけで勝負して売れている出版社はあるわけですからね。今の出版不況は面白い企画が出せなかったり、企画はあっても、実績のないものは実施に踏み切れないなどの会社組織の保身も手伝っていると思う

 なんとなく、『リバティーンズ』が狙っていることが見えてきたのではないでしょうか。

 隔月で毎号40ページの特集と、40ページを超える第一線の執筆陣による映画、本、音楽、アートなどのレビュー、20ページのロングインタビューなどで構成される新しいこの雑誌は「ネタになる、アテになる、バズをうむ」雑誌を目指すと宣言しています。

 そして、気になる創刊号の特集は「Twitter最終案内」。坂本龍一の娘でミュージシャンの坂本美雨さんが、サンフランシスコのTwitter本社を訪れています。いったい、どんな誌面が展開されているのか、読んでみたいと思いませんか?



『リバティーンズ 創刊号』
 著者:
 出版社:太田出版
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