2002年W杯日韓大会で日本代表をベスト16に導いたフィリップ・トルシエ氏。日本サッカーに史上最高の結果とインパクトを与えた、稀有な監督だといえる。そんなトルシエ氏の眼に、2010年W杯南ア大会に挑もうとする日本代表は、どう映っているのだろうか。著書『岡田ジャパン「W杯4強」へのイバラ道』で語っている。

 「カメルーン戦に負ければ予選リーグ突破の可能性は0%」

 もし、カメルーンに負けた場合、2戦目に対戦するのはデンマークに勝利するであろうオランダ。優勝を狙うオランダは、2勝して早々に予選突破を決めたいため、全力で日本を倒しに来る。ここで2敗目を喫してしまえば、仮にデンマークに勝っても1勝2敗になり、予選突破の可能性は相当低くなる。カメルーンに負けた後に、その後の2試合をコントロールできるほどの力を今の日本代表はもっていない。初戦のカメルーンに勝利し、明るい希望をもってオランダとデンマークと対戦しなければ、岡田監督が掲げるベスト4は見えてこないのだ。

 しかし、トルシエ氏は「W杯で勝てる」という前向きな判断材料が、現段階で極めて乏しいとみている。

 その理由の一つとして、格上相手とのトレーニングが十分にできていないことをあげる。09年の17試合のうち9試合をアジアと対戦し、10年は他大陸との親善試合はあるものの、いずれもホームゲームとなっており、相手の来日メンバーは限られている。このような相手と試合をしていれば、力関係は終始、日本が上回っているという状況になる。ボール支配率が高く、チャンスもつくれる。

 しかし、W杯本番で対戦する3か国は、理論上では格上となる。1試合の多くの時間を守備に費やすことになるのは目に見えている。攻撃にいくチャンスも少なくなり、限られた時間のなかでゴールを奪いにいく必要にも迫られる。得点することの難易度が極めて高くなってしまうのだ。

 岡田監督が頻繁に選ぶ守備的な選手は、GKを含め3人しかいない。楢崎正剛、中澤祐二、田中マルクス闘莉王だ。本来は守備的な仕事を多くこなすべきサイドバックには、内田篤人や長友佑都を選び、彼らは試合の度に高いポジションをとり、クロスを放り込む。長谷部誠や遠藤保仁にしても、できるだけ足元でボールをもらい、前へ前へという意識が強い。「攻撃に参加することが第一の仕事」だと、自負しているかのようだ。

 また、サイドバックやボランチに、しっかり守れる選手が見当たらないだけでなく、彼らの前に位置する中村俊輔や中村憲剛も。決して守備能力の高い選手とはいえない。チーム全体が守備的ではないのだ。W杯本番で、内田や長友、遠藤に「今回はひじを使って相手にプレッシャーを与えて、自由にさせないようにしろ」「体をぶつけて強引に守りきれ」などと指示しても、そういうタイプではないからできない。

 これを解決するオプションを岡田監督が持っているは否か......。W杯南ア大会の日本代表を占ううえで、非常に興味深いところである。



『トルシエの眼力』
 著者:フィリップ・トルシエ
 出版社:徳間書店
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