パリのシャルルドゴール空港からTGVに揺られること2時間。到着したリヨンは、寒さも、暑さも一切感じない完璧な気候。気温は人間が最も心地よいと感じる摂氏18度に、限りなく近いはずだ。明日の一戦、チャンピオンズリーグ準決勝は、どうなることやら。


本来、日本のサッカーファンに、他人の心配をしている余裕はないのだけれど。先ほど、「スカイプ」で、早起きが日課になっているカメラマン某と話をすれば、日本の新聞には、5月24日の韓国戦で敗れれば、岡田サンからブッフバルトに代表監督が交代するという記事が載っていたのだそうだ。ホントか嘘か知らないけれど。

もっともリヨンに到着すると、日本について、岡田ジャパン以外の心配も湧いてくる。日本人の姿が見当たらないことだ。少なくとも4、5年前までチャンピオンズリーグの現場に到着すれば、「彼ら」の姿はわりと簡単に発見できた。日本発の機内の中ですでに発見できた。サッカーファンと思しき人たちが、機内の4分の1ほどの座席を占めていたことさえあった。


不景気の影響も多分にあるのだろうけれど、そうした人が、ここ何年かの間でほとんど見当たらなくなってしまったことも、僕には、岡田ジャパンと同じくらい心配に映る。10日ほど前、テレビのニュースで報じていたことだが、日本の大学生の海外への関心は、世界的に見て恐ろしく低いのだそうだ。これは大学生に限った話ではないはずだ。日本人の多くはここ何年間で、急に内向きになったような気がする。


「4−2−3−1」をはじめ、僕はこのところ、立て続けに本を出版していて、おかげさまで、いずれもそこそこの売り上げを記録しているが、僕が読者なら「あの本は良い本でした。ためになりました」とは、口が裂けても言わないだろう。
コイツが書いている内容は本当なのかと、まず疑って掛かるだろう。褒められるのは嬉しいけれど、一方で、自分で見て確かめてきたらとか、人の言うことを信じすぎない方が良いですよと言いたくなる自分がいる。僕が間違いを書かない保証はどこにもないのだから。


納得してもらうために書いているわけではないのだ。少なくとも半分は疑って欲しいし、それを受けて、確かめに出かけてもらうことを願っている。聞かされるほど、見に行きたくなる。確かめに行きたくなる。僕の観戦動機はこれだった。いわゆる先輩から聞かされれば聞かされるほど、負けてたまるか、ヨーシという気になったもんだ。サッカーにおいて、読んで納得することほどつまらないモノはない。読んだら出かける。聞いたら出かける。偉そうに言えば、サッカーファンはこうあって欲しいものだ。


来る南アワールドカップに、日本から観戦に出かけていく人は少ない。これまでワールドカップ観戦に出かけたことのある人に「南ア行くの?」と訊ねれば、十中八九「ノー」と答える。「行くわけないでしょ」てな顔で。確かに、治安は悪いし、いろんな意味で行きにくいワールドカップではあるけれど、イラクに行くわけではない。戦争している国へ行くわけではない。何事もなく無事に帰ってくることができたら、これほど楽しい旅はないのである。もう少し、腰の軽い人が増えて欲しいなーと思わずにいられない。


と言いながら、また性懲りもなく、また本を出版します。『サッカー「見るプロ」になれる50問 50答』(定価税込み600円)三笠書房(王様文庫)より4月28日発売です。


自称「見るプロ」、自称「見る目のあるサッカーファン」が、1人でも多く増えることを願って書いてみました。よろしくお願いします!

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