歴史的瞬間を追体験する──重大事件を報じた写真集『世界を変えた100日』

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 サッカーファンは、「リオネル・メッシの試合に立ち会えたのは幸運だ」とよく彼のプレーを讃える。マラドーナしかり、スポーツ選手の輝ける時期はほんのわずかな間でしかない。今しか見ることができないもの、その瞬間を目撃することは、刺激的で、とても幸運なことだ。

 世界を揺るがす事件に遭遇するのは、もっと稀なこと。この年、この月、この日に何が起こったのか。『世界を変えた100日 写真がとらえた歴史の瞬間』(日経ナショナルジオグラフィック社)は、歴史的大事件の瞬間をとらえた報道写真集だ。米ナショナルジオグラフィック誌と報道写真の殿堂・ゲッティイメージズから厳選した250余枚の写真と解説が、事件を生々しく伝える。古くは1851年5月1日「第一回万国博覧会」から、近年では2005年8月29日「ハリケーン・カトリーナ」まで、写真という技術が生まれてからおよそ150年の間に起こった100の事件が掲載されている。装丁は白地に文字だけと、ごくシンプル。評論家・佐藤優も推薦する重厚な一冊だ。

 「リンカーン大統領暗殺実行犯の処刑」「原爆投下直後の広島の街」など戦慄の場面を切り取る一方、「エイズに罹患した子どもを抱きしめるローマ法王」など心温まる写真もある。「キング牧師の演説」では、人いきれもそのままに群集の熱狂を伝える。「マチュピチュの発見」や「プレスリー、テレビに出演」など、ただの政治史にとどまらず、幅広い分野を取り扱っているのも興味深い。

 この本の優れている点は、恣意的でないことにある。フラットな記述と一枚の写真で切り取られた事実は、鈍器のような破壊力に満ちている。第一線のカメラマンによってフィルムに焼き付けられた歴史の瞬間を追体験しよう。世界は明日、変わるかもしれない。
(文=平野遼)

ニック・ヤップ
写真を通して歴史をひもとく分野などで、約40冊の著作がある。また、英国BBCのテレビやラジオの番組制作やニューヨ−ク・タイムズのコラム執筆の経験を持つ。



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