吉川英治文学新人賞に輝いた冲方丁の話題作『天地明察』が、今度は第7回本屋大賞を受賞(この二冠を制覇したのは、恩田陸『夜のピクニック』、佐藤多佳子 『一瞬の風になれ』に続いて3作目)。さらにこの秋には『マルドゥック・スクランブル』が劇場アニメ化予定と、2010年は冲方丁イヤーになりそうだ。

 といっても、吉川新人賞の贈賞式で、「この読みにくいペンネームはなんとかならないのか」と先輩作家からさんざんネタにされていたくらいで、まだ一般に名前が浸透しているとはいいがたい。たしかに、「冲方丁(うぶかた・とう)」は相当な難読筆名だが、そもそも彼はどういう作家なのか?

 冲方丁は、1977年2月、岐阜県生まれの33歳。18歳で書いた処女長編『黒い季節』が第1回スニーカー大賞〈金賞〉を受賞し、1996年、早稲田大学1年生のとき、華々しくデビュー。しかし、あまりに型破りの才能だったため、ライトノベルの枠に収まらず、なかなか本が出せない苦難の日々が続く。
 2003年、ハヤカワ文庫JAから出た『マルドゥック・スクランブル』三部作が各方面から絶賛を集め、日本SF大賞を受賞したことで状況が一変。翌年からはTVアニメにも積極的に関わり、「蒼穹のファフナー」などのシリーズ構成(時には原案・原作・脚本も)担当。2007年からは富士見ファンタジア文庫と角川スニーカー文庫で、『スプライトシュピーゲル』と『オイレンシュピーゲル』を同時進行(現在は、冲方丁"最後のライトノベル"と銘打つ完結編『テスタメントシュピーゲル』がスニーカー文庫で進行中)。

 2009年11月に出た『天地明察』は、高校生のときから魅せられていたという暦学者・渋川春海の半生を描く明朗歴史時代小説。当初はさほど有力視されていなかったが、年が明けてから急速に支持者を増やし、今回の快挙となった。時代小説第二弾としては、水戸光圀を主役にした新作の連載がまもなく『野性時代』で開幕する見込み。しばらくは冲方丁から目が離せない。
(大森望)




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