「謹訳」という言葉をご存知だろうか。
 「翻訳」でも「直訳」でも、そして最近話題の「超訳」でもない「謹訳」。この言葉を冠につけた『謹訳 源氏物語』が注目を集めている。

 『源氏物語』といえば平安時代の女流作家・紫式部によって執筆された長編小説で、光源氏と薫、2世代を巡る恋愛小説としても名高い。また、当時の宮廷の様子や貴族文化を知る上でも重要な文献として知られる。

 3月17日に祥伝社から出版された『謹訳 源氏物語』は、そんな『源氏物語』を“謹訳”したものだが、そもそも“謹訳”とは一体なんなのか? これまでの訳とは一体何が違うのか? さっそく出版元である祥伝社の栗原和子さんにお話をうかがったところ、栗原さんは以下のように話してくれた。

 「“謹訳”は、翻訳をした林望(はやし・のぞむ)先生の造語です。古典文学をご専門とする林望先生が、学問的に正確に『源氏物語』を訳したいという願いが込められ“謹訳”という名前がつけられました。まるで現代小説を読むように読める表現でありながら、原典を正確に解釈する試みがなされています」

 なるほど。確かに言葉は現代語と遜色なく、丁寧に訳されていてとても読みやすい。いつもなら苦労する主語の在り処も明確だ。
 高校時代、古典の試験直前になると、源氏物語をマンガ化した『あさきゆめみし』(大和和紀/作、講談社)を読み込んだものだが、それに代わる新しい『源氏物語』勉強のための参考書になりそうだ。

 また、装丁も凝っている。
 カバーを外し、背表紙を見てみると…。



 背中から本の構造が丸見えだ。ちょっとセクシー。見てはいけないようなものを見てしまった気がする。
 しかし、これも立派な造本法。“コデックス装”と言うそうで、「これも林望先生のアイデアです。平安朝から中世にかけて日本の貴族の写本に用いられた「綴葉装」(てつようそう)という装訂法のイメージを再現しました」と栗原さんが説明してくれた。

 『謹訳 源氏物語』は今年3月の第一巻から2年かけて全十巻を出版する予定。
 今回取り上げた第一巻は「桐壺 帚木 空蟬 夕顔 若紫」を収録しており、4月28日には「末摘花 紅葉賀 花宴 葵 賢木 花散里」を収録した第二巻が発売される予定だ。

 「二巻には、三浦しをんさんに推薦文をお寄せいただきました。『光源氏って、いやなやつ! でも、憎めないところもある……。などと思いながら、すらすら読むことができました』。この言葉に、共感です」と栗原さん。
 こんな『源氏物語』が高校時代にあれば、『あさきゆめみし』と一緒に読んでいただろうな。これから『源氏物語』に触れようと思っていれば、まずは謹訳版から入ってみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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