日本人とは一体何者なのか

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 メルカトル図法で描かれた世界地図を見たとき、日本がその地図の中央に位置していることが多い。というか日本で流通している地図のほとんどはそういう風になっている。
 だからといって日本が世界の中心にあるのではない。オーストラリアで世界地図を見ると、日本の世界地図然り、オーストラリアが地図の中心に配置されており、日本は世界の中心にはない。

 そう、日本は世界の中心ではないのだ。

 では、日本とは一体何処にあるのか?
 答えは「辺境」である。

 そして、そこで生きている日本人とは「辺境人」である。

 昨年刊行された1500冊以上もの新書本の中から最高の一冊を選ぶ「新書大賞2010」で見事、大賞を受賞した『日本辺境論』(内田樹/著、新潮社/刊)はそんな主張から始まる。

 「辺境」とはそもそも何か。内田樹氏は「中華」の対概念として「辺境」が存在し、これらは中華思想に基づく華夷(かい)秩序のコスモロジーの中においてはじめて意味を持つものであると指摘する。
 つまり、中国を中心とした東アジア圏の国々の間には明確な秩序があり、そのなかで日本は辺境として捉えられているというのだ。

 日本人はそうした辺境の国“日本”で生きる“辺境人”なのである。

 戦後、日本は先進国として経済成長を果たし、東アジア諸国を引っ張ってきたではないかという主張もあるだろう。しかし、本書はそういうことを言っているのではない。
 本書は端的に言えば「日本人論」であり、長い歴史の中で築き上げてきた日本人の「辺境性」を、様々な思想や言説、さらには現代的な事象を被せながら論じる。

 国内外の多くの学者がこれまでたくさんの「日本人論」を論じ、その特異性や辺境性を論じてきた。しかし、我々日本人はそれらを読んでもすぐに忘れ、新たな日本人論に飛びついてしまう。

 本書も新たな「日本人論」なのかと問われればそうではなく、これまでの言説の刷り直しであって、目新しい主張はあまりない。しかし、著者本人はそれを冒頭で認めた上で、再確認するためのものであると述べている。

 「自分たちとは何者なのか」。手軽さがウリの新書としてはかなりボリュームのある内容となっているが、それだけ思索に耽る材料がたくさんある。
 さすが、新書大賞に輝いた一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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