4月3日にアメリカで発売された「iPad」が、既に45万台も売れたことが米アップルから発表された。電子書籍の端末としても期待される「iPad」は「Amazon Kindle」とともに電子書籍の普及に一役ことが期待されている。

 気鋭のジャーナリスト・佐々木俊尚氏が4月15日に刊行する新刊『電子書籍の衝撃』は電子書籍の出現によって何が起こるのか、そして出版業界の構造がどう変わるのかを大胆予言した一冊となっている。
 そんな本書の出版を記念した講演会が4月6日、出版元のディスカヴァー・トゥエンティワンの主催によって行われた。佐々木氏はどのようなことを我々に語りかけてくれたのか。その内容をレポートする。

◇   ◇   ◇

■この変化を歴史の1つの転換点として位置づける

 佐々木氏の主張の特徴は、電子媒体の登場を歴史の1つの流れの中で意味づけているところにある。
 ヨハネス・グーテンベルクが15世紀に活版印刷を発明したとき、実は現在の電子書籍と同様に批判を浴びた。しかし、佐々木氏はその活版印刷の普及が宗教革命やルネサンスを引き起こした事実を指摘。電子化が急速に進むこの21世紀に、新たな技術革新の波が再度来ているに過ぎないのだと言う。
 そして、単純に現在の“紙から電子へ”という議論だけで電子媒体を批判するのは「自分の感覚だけで語り過ぎ」と苦言を呈する。

■電子書籍の普及は“フォームファクタ”が鍵

 続いて佐々木氏は電子タブレット(端末)について言及。
 電子書籍の普及の鍵になるのは、“フォームファクタ”、つまりタブレットの形状がもっている意味が一番重要であると言う。

 例えば、iPhoneで提供される産経新聞アプリ。これはiPhone上で産経新聞の紙面をそのまま読めるサービスだ。このサービスそのものは素晴らしいが、iPhone上の小さな画面から覗くと読みやすいとは言い難い。このことから何が言えるか、それは端末に適したレイアウトが存在するということである。
 パソコンのモニター画面を見て欲しい。基本的には全て横組みでテキストが流れているはずだ。もし、これが縦組みであった場合、とても読みづらくなるのではないか。
 佐々木氏は、その形状(大きさ)や使うときの姿勢からしても、「iPad」や「Amazon Kindle」といった電子タブレットが書籍に代わるものであると指摘する。

■電子書籍時代で本の売れ行きの鍵を握るのは誰?

 書籍が電子化されたとき、どのような変化が起こるのだろうか。
 佐々木氏は書籍が電子に移行したときに起こる現象として「脱パッケージ化」を指摘。音楽業界におけるiTunesの事例を引き合いに出しながら、「新刊も既刊も同じ土俵になる」と述べた。

 これまでは表紙やタイトル、書籍の帯など、書籍のパッケージ部分が売り上げを左右してきた。しかし、電子書籍はどんな本にもアクセスしやすくなる。そのとき最も重要になるのは、パッケージではなく、「コンテキスト」である。
 「コンテキスト」の代表的な例は書評ブログだ。作り手でも買い手でもない第三者がその書籍をどのように読めば良いのか、自分の読書体験を紹介、そのテキストを参考にユーザーが書籍を購入するという仕組みが成り立つ。そこでは表紙やタイトルといった“パッケージ”の重要性は薄くなる。

◇   ◇   ◇

 この他にもコンテンツのマイクロ化や出版取次の功罪など、様々な内容を1時間半にわたり語った佐々木氏。
 今回の講演内容は、4月15日に刊行される新刊『電子書籍の衝撃』に基づいたものだったが、佐々木氏の話も中には書籍には掲載されていない「ここで初めて話す」内容もあり、定員100席が満員になったホールは、大いに盛り上がりを見せた。
 電子書籍の将来を占う1冊。業界人のみならず、書籍が好きな読者も読むべき一冊である。

 また、『電子書籍の衝撃』はデジタルブック版としてもリリースされており、ディスカヴァー・トゥエンティワンが運営する「ディスカヴァーデジタルブックストア」で購入が可能。電子タブレットでも読みやすいように、レイアウトに工夫を凝らしているという。または、4月14日正午までは110円という破格の価格での提供となる。
 この機会に電子書籍を試してみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)


【関連記事】
佐々木俊尚氏の新刊『電子書籍の衝撃』のデジタルブック版が期間限定110円で提供
“電子書籍の普及”カギはどこに ポット出版が書籍と新刊同時に電子化を発表
アメリカの電子市場事情を探る―『キンドルの衝撃』

【新刊JP注目コンテンツ】
メディアを変えるキンドルの衝撃(新刊ラジオ 第1081回)
フリー ― 無料からお金を生みだす新戦略(新刊ラジオ 第997回)