最新刊『天国旅行』を出版した三浦しをんさんへのインタビューも今回が最終回。
 今回は三浦さんの読書人生についてお話をうかがっている。読書にハマる最初のきっかけはどのようなことだったのか、どうして作家になったのか、そして三浦さんがお勧めする3冊の本まで。
 是非、最後まで読んで欲しい。

◇  ◇  ◇


■「親近感を持って読んでもらえるのではないかと思います」


―三浦さんが読書に目覚めたのはいつごろですか?

三浦「幼稚園か小学校の低学年だったと思います。ケストナーとかリンドグレーンなど、児童文学といわれるものを読んだ時はむちゃくちゃ入り込んでいましたね。“ こういう面白い友達と遊んだりできたらいいな”とか。常に夢見がちだったので(笑)そういう風に得た読書の喜びは今でも続いているような気がします」

―三浦さんといえば、漫画に造詣が深いことでも知られていますけども、最近お気に入りの漫画はありますか?

三浦「昨年末に出たので最近とは言えないかもしれませんが市川春子さんの『虫と歌』というのが面白かったです。昨日読んだ鳥野しのさんの『オハナホロホロ』もよかったですね」

―現在しきりに取り沙汰されている「非実在青少年」に関する論議について、ご意見があれば聞かせていただけませんか。

三浦「生身の少年少女、生身のちびっ子が登場するような作品には規制が必要だと思っていますが、アニメや漫画に関しては、条例などで規制するべきではないと思っています。自由な発想や表現を規制するような可能性のある法律・条例には断固として反対です」

―人生において影響を受けた本がありましたら3冊ほど教えていただきたいです。

三浦「丸山健二さんの『水の家族』、中井英夫さんの『虚無への供物』、大西巨人さんの『神聖喜劇』。3冊とも小説ですね。いずれも衝撃を受けて、居ても立ってもいられなくなる感じでした」

―そういう衝撃は“私も書きたい”という方向に向かうんですか?

三浦「いえ、むしろ“書くとか無理!”って思いますよ(笑)でも“こんなすごいものを読めるなんて生きててよかった!”と興奮しました」

―三浦さんが自分でも書いてみようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

三浦「私は元々編集者になりたくて、就職活動で出版社を回っていたんですけど、採用試験の時に書いた作文を、面白いと言っていただきまして。その出版社の採用担当係だった編集者の方が、後に著作権エージェントを立ち上げる時、何か書いてみたらと言ってくださいまして書いたのが最初です。当時定職がなかったので“ 時間ならたくさんあるしな……”って思って書きましたね(笑)」

―その作文はどんなテーマのものだったんですか?

三浦「『10年後の自分』というテーマでした。その出版社に入って売れっ子の作家から原稿を取りまくる名編集者の自分、みたいなことを書いたはずです」

―最後に本作『天国旅行』の読みどころを教えてください。

三浦「“心中”という共通のテーマはあるんですけど、それをどこまで意識するかはもちろん読者の方々の自由です。結構バリエーションに富んでいると思うので、そのあたりを“次はこんな話がきたか!”という風に楽しんでいただきたいですね。
登場人物たちの中には情けない感じの人もいれば、一途な人もいるので、親近感を持って読んでいただけるのではないかと思います」


■取材後記
 “心中”や“死”をテーマにしているということで、暗いお話ばかりの本だと思うかもしれないが、全くそんなことはない。全体を読んでのイメージは生命力の方が強かった。三浦さんが語ってくれたように、実に多彩な登場人物が描かれているので、想像力を湧きあがらせながら読んでみてほしい。
 ちなみに、新刊JP編集部のメンバーは三浦さんの作品の中では、映画化もされた『風が強く吹いている』を強く推していたが、個人的には今作の方が好きだ。
(取材・記事/山田洋介)


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