■第9試合 UFC世界ライト級選手権試合/5分5R
[挑戦者]フランク・エドガー(米国)
Def.5R終了/判定
[王者]BJ・ペン(米国)

BJの左ジャブに、左ローを見せるエドガー。エドガーの左には、BJが素早い右を返していく。

頭を左右、上下に振り、出入りの激しい動きを見せるエドガー、BJはオクタゴン中央で待ち受け左ストレートをヒットさせる。左ジャブの精度が高いBJは、エドガーの前蹴りも難なくかわす。好調に左を伸ばすBJ、エドガーが距離を詰めてアッパーを見せるが空を切る。エドガーの左ローに左フックを合わせる BJ。右アッパーから左フック、シングルレッグを仕掛けられても、片足でパンチを放っていく。

前に出てきたエドガーに左フックをヒットさせたBJは、左フックにも左をカウンターで合わせる。果敢に手、そして足を出すエドガーだが、ヘビーヒットは見られない。ヒザを受け、投げを狙うも、これもかわされたエドガーが大きく前方にバランスを崩したところで初回が終了した。

一瞬のパンチの交錯のなかで左目の下をカットしたBJは、エドガーの左ジャブをヘッドスリップでかわす。エドガーの右、BJの左が交錯し、直後にパンチを受けつつミドルを当てたエドガーが組みつこうとするも、BJはするりとその動きをすかしていく。

左右にステップを使うエドガーに対し、先回りするように左を繰り出すBJ。テイクダウン狙い、左ハイとBJの視線を散らす攻撃を見せるなど、エドガーの健闘は目立つが、如何せん攻勢には出られない。

前に出ては下がるという攻撃を続けるエドガー、ついにシングルレッグでBJに尻持ちをつかせることに成功する。

2R終了時、やや大きめに息をついたBJ。攻められてはいないが、いつになく左ジャブをヒットさせながら、思い通りに攻め込むことができていないという印象を残す。

3Rエドガーの左ジャブがBJの顔面を捉えるが、出入りの早さでライトヒットに留まる。エドガーが前に出てくるたびに左で迎え撃つBJは、左ジャブでエドガーのバランスを崩す場面が多くなってくる。めげずに右をヒットさせたエドガー、BJは左ハイをブロックし、踏み込んで左を放つ。スーパーマンパンチからシングルを狙うが、一瞬で決められないと、すぐに後方に下がるエドガーは、BJの制空権には少しでも留まることを嫌う。

痺れを切らしたように前にでるBJに対し、あくまでもエドガーは出入りの激しいファイトを繰り返す。4R、前に出るBJにテイクダウンを狙ったエドガーが組みつくが、すぐにいなされる。出入りの激しいというよりも、逃げ足が速いとも受け取ることができるエドガーのファイトだが、BJも待ち過ぎという印象を残す。

BJの右をダッキングでかわしたエドガーは、BJを前に出させて組みつくが、ここでもすぐに自ら距離を取る。珍しくバランスを崩すシーンが見られたがBJ だが、致命的な攻撃を受けることなくケージ際からオクタゴン中央へ戻る。前にでるBJに対し、エドガーの左がヒットしたところで4Rも終了し、試合は最後の5分へ。

前に出て、後ろに下がる展開を続けるエドガー。と、ここでエドガーがついにテイクダウンを奪う。すぐに立ち上がったBJだが、テイクダウンを許した印象は悪い。ライト級では8年ぶりとなるテイクダウンを喫したBJは、左ジャブを受けるシーンも。右ストレートをさらに受けたBJ、右ハイを放つが態勢が崩れている。

2006年のライト級復帰後、ライト級で初めて苦戦を経験したBJ、スピードで翻弄される珍しい展開に。残り60秒、前に出るとみせかけてさがるエドガーに対し、BJの手数がグンと少なくなる。試合終了間際に右を思い切り振るい、ヒザ蹴りを見せたBJ。自らに課せられた役割を完璧にこなしたエドガーは、試合終了と同時にチームメイトに肩車で担がれる。5Rの印象こそ強いエドガーだが、果たしてジャッジの裁定は?

判定の結果、50-45、48-47、49-46でエドガーが新チャンピオンに。涙声でチームメイトに感謝の言葉を告げるエドガー、「145ポンドに落とすから」というジョークも飛び出したが、大アップセットに合わない冗談のようにインタビュアーのジョー・ローガンの表情も固まったままだった。

カウンター狙いのBJが、自ら前に出ることができなかった敗戦――といえるが、カウンターを受けないため、タッチするようなパンチは、ある意味、掛け逃げと捉えることもできるのではないだろうか。世紀のアップセットといえるエドガーの勝利で、BJの絶対的な強さを封印する上手さは見せた新王者だが、そこに強さが見られたかどうか。戦いとゲームをバランスにかけると、ゲームが優る勝利だったように思われる。