W杯で日本の初戦の相手となるカメルーン。フランスのレキップ紙によると、ポール・ルグエン監督にとって、最大の悩みは右サイドバックだ。国際レベルの人材を欠き、アフリカネーションズカップでは、本来は中盤のマンジェック(カイザースラウテルン)を試したが、満足のいく結果は得られなかった。同じくMFで、チェルシーなどで右SBもこなしてきたベテランのジェレミ(アンカラギュチュ=トルコ)は攻撃面では申し分なかったが、守備に不安を残した。

 3月3日の国際親善試合イタリア戦では、新たにべつの中盤を右SBでテストする必要に迫られた。マルセイユのステファン・エムビア(23)だ。エムビアが“本職”とする守備的MFは、アフリカネーションズカップで抜群の安定感を見せた、マンジェック、エヨング・エノー(アヤックス)、アレクサンドル・ソング(アーセナル)の若手トリオのほか、ジャンII・マクーン(リヨン)も控えており層が厚い。

 エムビアは75分プレーし、イタリアに付け入る隙を与えなかった。ルグエン監督は「私が彼を右SBで起用したのは、もちろん考えがあってのこと。これからもこのポストで使う可能性は十分ある」と手応えをつかんだようだ。

 残る問題は本人の意欲。エムビアは2月以来、マルセイユでセンターバックのポジションを得ている。当初は負傷したエインセの代役としてだったが、エインセが復帰したあとも起用されつづけるほどデシャン監督の信頼は厚い。ただし守備的MFのポジションにこだわる本人は、たびたび「DFはやりたくない。ゲームに参加している気がしない。自分にはしっくりこない」と不満を口にしている。

 温厚なデシャン監督もついに「彼が与えられたポジションをいやだというなら、べつのポジションにしよう。私の隣(ベンチ)だ」と強硬なコメントを出さざるを得なくなった。代表でも“本職”を全うできないことを恨みつづけるのか、それともCBと違い攻撃参加ができるSBにやり甲斐を見出せるのか。ルグエン監督の説得にかかっている。チームを若手主体につくり変えた監督の新たな賭けとなるだろう。