1度社会から断絶されるとどん底に…貧困と無縁ではない「引きこもり」の実態
2009年頃から、引きこもる当事者や家族から「生活ができない」といった経済的困窮への悩み、生活保護の申請に関する相談が、日に日に増えてきているという。
とくに、当事者が35歳以上のケースでは、こうした貧困に関するものが多く、社会への不信感や絶望、怒りなどを切々と訴えてくる。
こう最近の状況を明かすのは、10年余りの引きこもる生活を経て、自ら引きこもり支援の“居場所”を立ち上げた、京都市の梅林秀行さん(36)だ。
同会の会費は、月額5000円。同業の民間支援団体に比べても、格安なほうだと思われるのに、「経済的にしんどくて、支えきれない」といった相談が目立つようになったという。
「リーマンショック以降、急速に経済状況が悪化しました。団塊の世代のボリューム層が、一気に離職した影響もあるようです。家族自身が定年退職や給料の減少、リストラなどの理由で、たとえ当人のキャリア形成を支援するためであっても、これまでのように、経済的な支援ができにくくなっているんです」(梅林さん)
引きこもりは、貧困と無縁ではない。基本的には、仕事をしていないからだ。
何らかの精神疾患を抱えていれば、医療費も増大していく。引きこもりという状態に入ることによって、支出は増えることがあっても、収入が増えることはない。
引きこもりは、セーフティネットの枠外にいる。貧困は、構造化されているのだ。
「貧困と経済的困窮の解決は、良くならない状況からのスタートです。この視点で、これまでの引きこもり支援は、なぜ語られてこなかったのか。引きこもりにどう対応すべきかの問題は、貧困や経済的困窮といったテーマにデザインされていなくて、解決に向けた選択肢を持てていなかったのです」(梅林さん)
なぜなら、引きこもり支援は、不登校支援の延長として成立したいきさつがある。また、家族同士の家族会を母体に、草の根的な引きこもり支援がスタートした。梅林さんは、「貧困がテーマ化されにくかった事情の1つではないか」と考える。
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