現場で働いているあなたは気づいているはずです。仕事を取り巻く環境は、マスコミや経営者が思っている以上に厳しいことを。あの会社もこの会社もいつひっくり返ってもおかしくないことを。そして、自分の会社も例外ではないことを。
 
 もし、あなたが勤めている会社が深刻な業績不振に陥っているとします。毎年赤字を計上し、給与や取引先への支払いが遅れるなど、「Xデー」が近づいているのは、誰の目にも明らか。それでも、社長をはじめすべての従業員が頑張っています。なんとか倒産だけは避けようと、一丸となって業務に取り組んでいます。

 この時、あなたはどのような行動にでますか?

 常識的に考えれば転職するべきだとは思っていても、仲間の手前もあり、最後まで会社に残ってしまう道を選択する人もいるのではないでしょうか。

 3月までテレビ朝日系列で放送中されていたドラマ『エンゼルバンク〜転職代理人』の原作者・三田紀房氏は、はっきりとこういいます。

 「最後まで逃げることなく、沈没する船に残って評価されるのは"船長"だけ。そのほかの乗務員は、むしろいち早く脱出することこそが評価の対象となる」
 
情に流されたり、わけのかわらないヒロイズムに酔ってはいけないようです。船が浸水して沈没が避けられないと判断したら、一刻も早く脱出すべきなのです。

 もっと具体的に説明すると、あなたが義理や人情、責任感などを理由に倒産するまで会社に残ったとします。当然、次の日から求職活動が始まるわけですが、求職者としてこれほど不利なスタートはありません。市場が「あなたは義理堅い人だ」と評価してくれると思ったら、大間違い。どんなに倒産の事情を話したところで、ただの「動けなかった人」としか見なされません。

 まず問われるのが、「情報収集能力」。なぜ、毎日仕事をしながら会社の変化に気づけなかったのか。情報をキャッチしようという意欲はあったのか。社内に有力な人脈(情報源)はなかったのか。会社の業績をどれくらい真剣に考えていたのか。すべて疑われてしまいます。

 次に問われるのが、「行動力」。会社の倒産の危機を察知できていたとしても、何もアクションを起こすことができなかったら、それは行動力の欠如と見なされかねません。この一大事を前にしても行動できないのなら、日常業務でもなんら積極性を発揮することはないだろう、という評価を受けてしまうのです。

 会社に義理を感じ、残って頑張っている仲間に後ろめたい気持ちを抱くのは理解できます。「最後の最後まで会社に残って全力を尽くすのが自分の責務だ」と考えたくもなるでしょう。しかし、あなたの「これから」を評価するのは、いまの社長でも同僚でもなく、あくまでも市場。沈没する船から脱出するのは「逃げ」ではないのです。むしろ、沈没する船に留まることこそ、問題を先送りしようとする「逃げ」の心なのです。



『会社に左右されない仕事術』
 著者:三田 紀房 (著), モーニング編集部 (著)
 出版社:講談社
 価格:1365円
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