坂本真綾
 1996年4月に発売したシングル「約束はいらない」でのデビューから、今年3月31日に15周年記念ベストアルバム「everywhere」を発売した坂本真綾。音楽活動と並行して、昨年は「エヴァンゲリヲン新劇場版:破」真希波・マリ・イラストリアス役、「FINAL FANTASY XIII」ライトニング役など声優として様々な役を演じてきた彼女が、“表現者”坂本真綾として自らのアイデンティティーを探し続けた15年。その歩みの先に辿り着いた場所とは。

――坂本真綾さんは音楽活動以外にも声優のお仕事など幅広く活躍されていますが、女優さんなど色んな役を演じられていると、「ご本人は、どういう方なのかな?」ってすごく興味がありまして。ご自身で自分のキャラクターについて自覚している部分や、逆に人から言われてギャップを感じるようなことはありますか?

坂本真綾(以降、坂本):何のイメージなのかは分からないんですけど、「ちゃんとしてそうに見える」とか「きっちりしてそう」とか言われたり、柔らかそうな性格に見られるんですけど(笑)。そういうイメージを抱いていた方からは「意外にバッサリした方なんですね」というのが、もう人生において何度耳にしているか分からないフレーズですね。自分でも結構、自覚があるのは、初めての方が多い場では、なかなか自分から溶け込んでいけないタイプなので、緊張したり遠慮したりして、ひっそりしてるつもりなんですけど。それが逆に人から見ると、「あの人、怒っているのかな?」みたいに、とっつきにくい場合もあるみたいですね。だけど、「意外に、話してみると普通」というのが感想みたいです(笑)。

――今回15周年記念ベストアルバムを発売されましたが、お仕事としては音楽活動以前からされていたわけじゃないですか。始めた当時ぐらいの年齢って習い事に近いような感覚があったかもしれませんが、小さい時に将来どんな大人になりたいかイメージはありましたか?

坂本:8歳から演劇に携わってお仕事をしてきたので、漠然とそういう職業に就くビジョンが無いわけではなかったんですけど。逆に、それだけを見てきた訳ではなくて、「スチュワーデスさんになりたい」とか「お花屋さんになりたい」とか「すし屋の奥さんになりたい」とか、色んなことを言っている中の一つが役者という感じでしたね。でも「早くお嫁さんになって」みたいなことよりは結構、自分で働くイメージの方が強かったです。

――音楽活動を始めた当時、どんな歌手になりたい、どんな歌を歌っていきたいというイメージはありましたか?

坂本:とにかく今、自分の目の前にある部分を一生懸命やっていくことだけで精一杯だったのもありますし。私の場合は「歌手になりたい!」と思って、それまで準備をしてきたわけでもなかったし。すごく特殊な形で、不意を突かれて急に歌手の道が開けたので。あまりそういうことを考えている余裕も無いままに16歳という、もう今にして思えばすごく子供だと思うんですけど(笑)、その年齢で歌手の道に入ってしまって、もう何年も先のことは全然想像できなくて。

ただ歌うことが好きだったし、周りのスタッフのことも大好きだったし。自分のことをすごく特徴の無い、つまらない人間だと思っていたんですけど、「そのままでいい」とすごく認めてくれる人がいる環境が、それだけで幸せで、それ以上の野望も無くて(笑)。本当に最初の、特に10代の時はそれが全てだったような気がします。