かつてのソ連は、周辺諸国を次々と武力併合しましたが、その時「お前の国をよこせ」と、いきなり大群を送り込むようなことはしませんでした。「軍事演習中なので領内を通過だけさせてください」「兵士の休憩所を借りたいんだけど」などと、まずは小さな要求をリクエストしました。相手が「そのくらいなら」と無警戒に応じている間に、徐々に軍隊を常駐させる−−。こうして相手の手を縛り、国際的な非難も浴びないように領土を拡張していったのです。

 会社の人間関係や商談で、あるいは恋愛のなかで、あなたもソ連の周辺諸国と同じような体験をした記憶がないでしょうか。言葉の裏を読めないばかりに、あやつられたり、だまされたり・・・。

 人材育成コンサルタントとして、年間220回の研修、講演活動を行い、そのリピート率が92%を超える人気を博す松本幸夫氏の著書『言葉の罠 仕掛ける・動かす・味方に変える』では、数多くの言葉の罠とその対処法が紹介されています。

 たとえば「今、大丈夫?」の言葉の裏には、「ノーとは言わせないよ」という意味が含まれていることをご存知でしょうか?

 一見相手を気づかっているようにみえる常套句ですが、これを携帯電話で言われたらどうでしょうか。電車の中にいるとか、本当に取り込み中とか、よほどのことがない限り、「はい。どうぞ」と言ってしまうのではないでしょうか。少々忙しいくらいで「ダメ!」という人は少数派です。

 「今、大丈夫?」と言う人は、もちろんそのあたりのことは計算済み。だから、「マナーのいい人だなぁ」なんて思っている場合ではありません。むしろ、相手はこちらにノーと言わせないために聞いているのだと考えたほうがいいと松本さん。最近多用されはじめた「今、大丈夫?」。かつては本当にマナーとして使われていましたが、今では「大丈夫ではない」「ムリ」を封じ込めるために使われている場合がほとんどだと指摘しています。
 
 相手を気づかうような言葉は、しばしば自分のエゴや利害を隠しもったイヤな言葉にかわります。だから、失敗をしでかした時など、「バカじゃないの」とストレートに言う人のほうが、「全然気になりませんよ」と言う人より、実はよほど優しいのかもしれません。なぜなら、前者は本音であり、後者は嘘なのですから。

 「今、大丈夫?」と言われた場合、「ダメ。忙しい」とスパッと断る勇気も必要です。「大丈夫?」は、「俺の電話だから話すのが当たり前」ということ。忙しくない時も「大丈夫ですよ」と対応せずに「ご用件は?」と話を進めることが賢明です。言葉の裏に秘められた意味は奥が深い−−。見栄えのいい表面上の言葉に惑わされないようにしたいものです。



『言葉の罠』
 著者:松本 幸夫
 出版社:経済界
 価格:840円
 >>表紙画像つきの記事を見る


■関連記事
「お金がないから結婚できない」は言い訳?〜『思いどおりに働く!』(2010年2月23日14:12)
滑走路1本で飛行機は何本飛べる?〜『航空機は誰が飛ばしているのか』(2010年2月20日19:01)
他人のせいにすると損をする?〜『平常心の鍛え方』(2010年2月14日18:56)


■配信元
・WEB本の通信社(WEB本の雑誌)→記事一覧