「無期懲役」「犯罪被害者の権利」―山積みの司法問題に提言を投げかける在日イタリア人の想い

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 「判決、被告人を無期懲役に処す」
 その判決が被告人に言い渡された瞬間、被害者遺族たちが涙を流し、悔しい想いを口にする。

 そんな光景をニュース番組やドキュメンタリー番組でよく見かける。

 「無期懲役」とは簡単にいえば終身刑である。被告人はずっと牢屋の中で生きていくしかなくなるのだ。なのに、何故、「無期懲役」という判決に悔し涙をするのか。その1つの答えに、「無期懲役」は終身刑であって終身刑ではない側面があるからだ。

 日本には「無期刑」という刑罰がある。ニュース報道などでよく聞く「無期懲役」は「無期刑」の1つであり、受刑者が死ぬまで自由を剥奪する刑を科す自由刑の扱いとなる。
 受刑者が死ぬまで刑に服すという意味では、「無期懲役」は「終身刑」の内に入る。ところが、日本の刑法第28条において「改悛の状がある」とされた場合、10年を過ぎたとき仮釈放することができると規定されているのだ。

 法務省の発表によれば、無期懲役の仮釈放者の平均在所年数は2000年で21年2ヶ月、2008年で28年10ヶ月となっており、重罪を犯したとしても20年から30年で仮釈放され、社会に出てくる可能性もあるわけだ。

 「死刑」と「無期懲役」の間にある、あまりにも大きい隔たり。そこに被害者遺族たちは涙を流すのだ。
 その隔たりを埋めるために、日本全国を行脚し10万名の署名を集めたのは、当国に生きる日本人ではなく、在日イタリア人のスキット・アルベルト氏だった。
 アルベルト氏は自身の妻と次女を連続放火魔事件で亡くし、長女とともに苦しみに耐えながら司法と戦ってきた。

 ビジネス社から出版されている『生きてこそ―妻子の鎮魂、そして終身刑の設立を求めて旅した全国20万キロの記録―』は、そのアルベルト氏が被害者遺族として人々や司法と“戦ってきた”その経過がこと細かく描かれている。

 「国が守るのは犯罪者の権利なのか」

 本書の中でアルベルト氏はそう訴える。
 1999年に起きた山口県光市で起きた光市母子殺害事件の被害者遺族である本村洋氏は、犯罪被害者の権利が一切保護されていないと指摘し、「全国犯罪被害者の会」を立ち上げるに至った。
 しかし、本書を読むと、まだまだ被害者遺族の権利や意思が充分に保護されているとは思えないだろう。

 「無期懲役」や「被害者の権利」など、問題が重なる日本の司法制度に対して、1人のイタリア人男性が大声で提言した。
 このことを、私たちはどう受け止めればいいのか。本書はそうしたことを考えるための良いきっかけになるだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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