トヨタ 残酷/単価半減“食えない”/下請け企業 低価格競争のツケ
「量産発注するから単価は30%減に」「毎年10%ずつの単価下げ」。世界一の自動車企業・トヨタ自動車は、国内下請け企業に対し系統的で過酷な単価たたきを押し付けてきました。経営困難に追いやられた中小下請けから怒りの声があがっています。(大小島美和子)
プリウス部品
「トヨタは、ホンダのハイブリッド車と価格競争するために下請け単価を猛烈にたたいた」―。信越地方の機械加工企業の経営者加藤達郎さん(63)=仮名=は指摘します。
ホンダが1台190万円を切るハイブリッド車を発表したのが08年秋のこと。当時のプリウスは230万円台で40万円近い差がありました。トヨタが09年5月に発売したハイブリッド車の新型プリウスは200万円を若干上回る価格でした。発売までに十数%も価格圧縮したことになります。
そのころ、プリウス部品の製造下請け中小企業が大幅な単価削減を迫られる事態が各地で相次ぎました。
信越地方のある中堅中小企業は08年夏にプリウス部品の量産を受注しました。とたんに単価を「30%減に」と求められました。交渉でなんとか「25%減」にとどめましたが、翌年にはさらに「25%減」を迫られました。
静岡県内でドア関連部品を製造する中小下請けも09年初頭に「発注量を増やすから単価を半分に」と要請されたといいます。
下請けは、量産のために機械や設備を導入しなければなりません。大企業は自ら負担することなく安値で部品を手に入れます。「トヨタはホンダとの価格競争に必要な値下げ分だけでなく、それ以上を下請けから吸い上げた」。トヨタのやり方に加藤さんは憤ります。
系統的に削減
トヨタの単価たたきは一時的なものではありません。長期、系統的に大幅な単価削減を行ってきました。
トヨタの城下町といわれる愛知県豊田市の周辺地域。ここで25年間、トヨタ車の組み立てラインに使う機械を造ってきた村田孝二さん(60)=仮名=はいいます。「トヨタはそれまでも年間数パーセントなど単価をたたいてきた。しかし2000年ごろからそれはひどいものになっていった」。求められた削減は年10%。それを毎年繰り返すようになったといいます。親企業は1件の発注につき、数社に価格の見積もりを出させて競争させるようになり、見積もり社数は4社にも5社にも増えました。「トヨタはともかく安さだけを追求するようになった」
08年秋の「リーマン・ショック」が疲弊した下請け中小企業に追いうちをかけました。仕事が急減しました。
村田さんの受注は09年4月からゼロに。採算はまったくとれなくなりました。金融機関から融資を受け、積み立てた退職金を取り崩し、自身は無給。「それでも、会社は生き続けさせたい」。村田さんには、3年前に入社し「後継ぎに」と決めた若い職人がいます。“その職人に工場を継承させるまでは会社はつぶせない”―。その思いが村田さんを仕事探しに駆りたてています。
森川和夫さん(42)=仮名=は、トヨタ車のプラスチック部品用金型を造ってきました。納める金型の価格は「04〜06年の間に3割、06年から08年の間にまた3割下がった」。トヨタグループ企業から森川さんの親企業に「今年の調達費は3割減で」などの指示がきたといいます。04年に単価の引き下げを求められたときは「まだどこかを絞ればなんとかなる」と思いました。しかし、繰り返される単価引き下げに、06年以降は「もうやれない」「乾いたタオルを絞ってももう何もでない」状態です。
森川さんは08年にトヨタのプラスチック部品の量産を受注したことがあります。そのために工場を借り、リース機械を何台も入れました。しかし、直後に「リーマン・ショック」が起こり、受注はゼロに。月90万円にのぼる機械のリース代金が残りました。金型受注も09年から止まっています。
「これまでの蓄えは全部吐き出した」。半端な仕事でも、とにかく仕事をして経営費にあてようと、職員を帰した後、一人で夜遅くまで機械に向かう日々が続いています。
独り大もうけ
トヨタは、2000年からCCC21(21世紀に向けたコスト競争力の構築)と称し、3年間で30%の原価低減を提唱。05年4月からは、VI(バリュー・イノベーション=価値の創造)と称して設計・開発段階からコストを見直すさらなる原価低減を追求してきました。その結果、トヨタは2000〜04年に1兆円超、05年からの3年間に3500億円の原価低減を実現しました。
森川さんは「われわれは長年トヨタの仕事をしてこんなに経営に苦労しているのに、なぜトヨタだけが大もうけなのか。11兆円もの内部留保をため込んでいること自体が異常だ」といいます。
「私の周辺では従業者1人、2人でトヨタの仕事をしてきた小さな機械加工業が仕事がなくなり、どんどん廃業している」と村田さん。トヨタへの怒りが膨らみます。
自動車生産でのトヨタの独り勝ちは、トヨタの低単価押し付けに反対できない状態をつくってきました。
浸透する支配
トヨタの生産が地域で圧倒的になると、以前は下請け中小企業に来ていた三菱やホンダの受注がなくなり、工場の機械や設備は「トヨタの専用状態」になってしまいました。受注先を変えるのに必要な機械・設備の変更費用もない中小下請けは「トヨタの言いなりになるしかなかった」と森川さん。しかし、これが「下請け単価を思い通りに下げようというトヨタの専横を激しくしたと思う」と語ります。
トヨタは、数千といわれる下請け企業集団を率いるグループ企業十数社の頂点に立つ巨大企業です。「そのトヨタの発言は下請けピラミッドを通し支配力を持って浸透する。地域では、下請けも社員もトヨタへの批判はタブー(禁忌)になった」と村田さん。しかし、今、コスト削減と利益確保のみに走るトヨタに、以前あったような“ものづくりの心”を感じない、といいます。
村田さんは言い切ります。「経営がなりたたなくなるほど下請けをたたき続け、自分の利益だけを最優先に追求する。そんな企業の体質が、安全性に欠陥のある車を生むんだ」
受注4割超減が7割
愛労連
愛知県労働組合総連合が発表した「『仕事・単価に関する中小企業アンケート』まとめ」(3月1日)では、回答を寄せた70社中、受注量がピーク時から4割超減った企業が7割にのぼりました。「この状態が続くと廃業を余儀なくされる」という声も寄せられました。
アンケートは、同労連がトヨタ自動車の下請け製造業が集中する豊田、刈谷、知立3市内の工場を対象に実施したもの。
単価については、受注量が激減したこの1年間にも引き下げ要請を受けた企業が6割にのぼりました。「単価の切り下げには限界があります。あまりにひどい値引きにならないようにお願いします」との切実な声も寄せられています。
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