「非実在青少年」問題――ネットで広まる“反対”と“賛成”の意見

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現在、あらゆるメディアで「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案に関する話題が飛び交っています。TVや新聞などの大手メディアも報じる中、顕著なのがインターネット上での論議。そもそも、この条例に関して火がついたのは、とあるブログからでした。小さな灯火だったこの問題は、すぐに著名人や関係団体に派生しさまざまな意見文・声明が発表され、いまや大きな炎となって東京都のみならず日本国内を揺るがしています。

「賛成?反対?「非実在青少年」問題 」の写真・リンク付きの記事

■何が問題視されているのか?

2月24日に東京都から都議会に「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案が提出されたところからこの問題は始まります。

▽番外その22:東京都青少年保護条例改正案全文の転載: 無名の一知財政策ウォッチャーの独言

「東京都青少年の健全な育成に関する条例」とは、1964年に東京都における青少年保護育成条例として制定されたもの。青少年(18歳未満と定義)の健全な育成を目的とし、「不健全図書」の規制や深夜外出の制限、みだらな性交や性交類似行為の禁止などが定められています。

今回の改正案にはさまざまな事項が盛り込まれていましたが、中でも問題視されているのが創作物に登場する「非実在青少年」に関する項目です。

▽The Prefectural Ordinance about young healthy upbringing (a reform bill) - 2010/2/24(改正案全文をスキャンしたもの)

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

架空のストーリーが繰り広げられる創造物では、たとえ見た目が子供であっても中身は大人であったり、その逆も然りと、ここに記述されている「非実在青少年」を、誰が、どんな基準で、何を持って、性交類似行為を肯定的に描写していると判断するのかが非常にあいまいになります。また、ほとんどの出版社が集結している東京でこの改正案を施行すれば、流通業界に多大な影響を与えかねません。さらに、このデリケートに扱うべき問題が、当初はとても急なスケジュールで進行される予定でした。

▽ソーシャル・ネットワーキング サービス [mixi(ミクシィ)](漫画研究家・藤本由香里さんのmixiでの日記)

議会での質問が許されるのは3月4日(代表質問)・5日(一般質問)だけで、これも数日前には質問を提出していなければならない。(つまり議員でさえ、検討できるのは3日程度)で、18日の13:00の付託議案審査がもっとも重要で、今月末には投票、決定、ということになります。

▽東京都の青少年健全育成条例改正案、継続審査が決定 -INTERNET Watch

本日19日に行われた東京都総務委員会で継続審査が決定、条例改正案提出が6月の議会に見送られましたが、もちろんこの問題が解決したわけではなく、肯定派、反対派のいずれにもピリピリとした空気が張り詰めています。


■肯定派・推進派の意見は?

▽「規制に反対するヲタクは認知障害者」(東京都青少年問題協議会) - 「反ヲタク国会議員リスト」メモ

こちらのブログでは、今回の改正案を作成した「東京都青少年問題協議会」のメンバーのコメントがまとめて掲載されています。


▽青少年健全育成条例改正案の成立に関する緊急要望書を提出 | 社団法人 東京都小学校PTA協議会

東京都小学校PTA協議会広報委員会の公式ブログでも、「青少年健全育成条例改正案の成立に関する緊急要望書を提出」と題したエントリーが発表されています。


▽痛いニュース(ノ∀`):山本モナ「子供性描写早く規制して、女性は苦痛なのキモイの、日本人は極端にエロすぎ、もう嫌なの」

タレントの山本モナさんも、子供の性描写への嫌悪感を示しているようです。


■多くの関係者が反対意見を提示

肯定派の意見も去ることながら、ヒートアップしているのが反対派の動き。さまざまな人物・団体から続々と反対意見が上がっています。


▽「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感 - ITmedia News

ちばてつやさん、永井豪さんら大御所のマンガ家は、その腰を上げ都庁で会見を開きました。


▽コミックナタリー - 「非実在青少年」にマンガ業界からリアクション続々

秋田書店・角川書店・講談社・集英社・小学館・少年画報社・新潮社・白泉社・双葉社・リイド社は、「マンガ作家有志およびコミック10社会構成出版社一同」の名義で民主・自民・公明・共産・社民の5党の総務担当と、無所属の議員2名に、反対意見書を提出。


▽822名の反対署名が集まりました - 太田出版

太田出版はマンガ家、イラストレーター、編集者など、920名の反対署名を集めました。江口寿史さん、浅野いにおさん、オノ・ナツメさんなど、人気作家の名前がズラリ。


▽島本の感想文 | 非現実青少年条例

島本和彦さんも自身のブログで反対意見を記述。


▽全国同人誌即売会連絡会

多くの同人誌即売会が加入している「全国同人誌即売会連絡会」からも反対表明が発表されています。


▽京都精華大学:インフォメーション:大学からのお知らせ:[報道発表]東京都青少年健全育成条例改正案に関する意見書について

マンガ学部を有し、京都国際マンガミュージアムの設立・運営にも携わっている京都精華大学も、「都議会民主党総務部会」へ反対の意見書を提出しています。



■どうしてネットでこの問題が広まったのか

▽漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案 (2/2) - ITmedia News

はじめ、さほど大きく取り上げられていなかったこの問題が、ここまで広まった要因のひとつに「インターネット」の存在があります。中でも連日アツい議論が交わされているのが、ミニブログサービス「Twitter」。「Twitter」には、マンガ家やイラストレーター、クリエイターなど、条例が改正されると多大な影響を受けるユーザーが多く、またたく間に一般ユーザーにもこの問題が浸透。一気に反対・賛成のコミュニティが広まり、署名活動にまで発展しました。

マンガ家・高河ゆんさんのTwitterでの反対コメント。

▽Twitter / 高河ゆん: @daiichi_daiman バカバカしくて、そも ...


■錯綜する情報――今後の展開は

さまざまな情報が行き交い、何が正しい情報なのかがわかりづらい「非実在青少年」問題。情報の錯綜を招いた、あいまいな条文について、東京都から、解釈の見解も発表されています。

▽東京都、「非実在青少年」に関する条例案の解釈など見解を発表 -INTERNET Watch


今回の問題の経緯に関しては、以下のサイトで詳しくまとめられています。興味のある方は一度見てみてはいかがでしょう。

▽東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト

▽「非実在青少年」問題とは何なのか、そしてどこがどのように問題なのか?まとめ - GIGAZINE

「性的な表現が子供にとって悪影響を与える」――。確かにその考え方も間違ったものではないでしょう。しかし、性的な表現が含まれるからと言って創作物が与えてくれる世界を否定するのは、逆に子供たちの視野を狭めてしまうのではないでしょうか。筆者も、小説やマンガ、映画、アニメなど、たくさんの創作物に触れながら育ってきました。確かに「行き過ぎた表現だ」と感じる作品もありましたが、多くは新しい世界を教えてくれ、感受性を豊かにする作品であったと思います。「臭いものにフタをする」という凝り固まった方法ではなく、否定派も推進派も納得できる柔軟な解決に向かうことを、願ってやみません。

Title Photo by kanegen

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