小説にとって「場所」は重要な要素だ。
 どのような場所が舞台として使われるかによって、構築される物語そのものも変わる。また、時にはピンポイントで使われた「場所」がストーリーの鍵になることもある。

 今月の「本まみれ」では、そんな「場所」にスポットライトをあてたランキングをご紹介。先月の「小説の舞台で行ってみたい場所【架空編】」に続き、今月は「小説の舞台で行ってみたい場所【実在編】」として独断と偏見をもってランク付けする。
 今月紹介する本に登場する場所は、日本、海外全て実在する場所。その5冊はこちら!

◆『オー・マイ・ガアッ』浅田次郎・著(集英社) 場所:ラスベガス
◆『鴨川ホルモー』万城目学・著(角川書店) 場所:京都
◆『ガダラの豚』中島らも・著(集英社) 場所:ケニア
◆『冷静と情熱のあいだ Rosso』江國香織・著/『冷静と情熱のあいだ Blu』辻仁成・著(角川書店) 場所:フィレンツェ、ミラノ
◆『午前三時のルースター』垣根涼介・著(文藝春秋) 場所:ベトナム


▼ランク付け基準
 前回と同様、「自分が本当に旅行に行くならここに行きたい。その場所に行って小説の雰囲気を味わってみたい」という基準でランキング付けをしている。

では、ランキングスタート!


5位 『ガダラの豚』
中島らも・著/集英社 [あらすじはこちら]


場所【ケニア・キスム】
 ケニアのキスム。キスムはナイロビから北西に約200キロ、車で6時間ほどにある街。ナイロビ、モンバサにつぐ都市で、世界で2番目に大きな淡水湖ヴィクトリア湖に面している。街には路上マーケットもあるが、半日も歩いて回れば1周できてしまうくらいの小ぶりな街。インパラやサヴァンナ・モンキーがホテルの庭まで入ってくる。


4位 『午前三時のルースター』
垣根涼介・著/角川書店 [あらすじはこちら]


場所【ベトナム・サイゴン】
 舞台はベトナムのサイゴン。ベトナム最大の商業都市であり、現在はホーチミン市という。本作中にも出てくる、南ベトナム最大級の市場・ベンタイン市場は、コンクリートで出来た巨大な平屋の建物からなり、吹き抜けの屋根の下に雑多な小売店が集まり大きなマーケットを形成している。さらにその建物から放射状に広がる狭い路地にも露天商が軒をつらねている。まさしく東南アジアの風景を想起させる場所だ。


3位 『鴨川ホルモー』
万城目学・著/角川書店 [あらすじはこちら]


場所【日本・京都】
 日本人の心の故郷・京都。言わずと知れた古都で、清水寺や金閣寺など数々の日本有数のお寺や神社があり、基板の目状の街並みが象徴的。主人公・安倍の通う京都大学をはじめ、立命館大学、龍谷大学、京都産業大学、同志社大学などの多くの大学が隣接し、学生の街でもある。鴨川べり、三条〜四条間ではカップルが等間隔で座り夕涼みをする光景で有名。


2位 『オー・マイ・ガアッ』
浅田次郎・著/集英社 [あらすじはこちら]


場所【アメリカ・ラスベガス】
 カジノで知られるアメリカ西部ネバタ州最大の都市。巨大なホテルが建ち並び、大きなホテルのほとんどにカジノが併設されている。その中には野球場がすっぽり収まるサイズのカジノもある。カジノでは飲み物は無料で、食事も安い。なぜなら、これらのホテルはゲスト・ルームに冷蔵庫もルーム・サービスもない。喉が渇けば、カジノ・フロアに下り、1杯のカクテルで散財をすることになる。


1位 『冷静と情熱のあいだ Rosso』『冷静と情熱のあいだ Blu』
江國香織、辻仁成・著/角川書店 [あらすじはこちら]
 

場所 【イタリア・フィレンツェ、ミラノ】
 日本人からは観光地として人気のミラノとフィレンツェ。ミラノは、遺跡や歴史的な遺産を多く持ちながらも、近代的な世界の最新ファッションの発信地であり、近代建築と中世の建築が混じりあっている。フィレンツェは、ほぼ同じ高さに揃えられた赤茶色の瓦屋根の昔からの街並みが今もそこにあり、統一感のある街だ。


▼総評
1位は『冷静と情熱のあいだ』。
 フィレンツェ、ミラノが主な舞台だが、いずれも一度は行ってみたい憧れの街だ。小説を通して伝わってくるミラノは、「古」と「新」が混じりあった街で、フィレンツェは「古」の街という印象だった。
 特に私は世界史が好きなので、昔からの歴史と街並みを今でも守っているフィレンツェに行ってみたくなった。物語の主人公である順正の職業が絵画の修復士、あおいがジュエリーショップの店員であるように、フィレンツェは革製品、貴金属、刺繍など工芸が盛んだ。彼らの浸った手作りの文化をもっと間近で見てみたくなった。

2位は『オー・マイ・ガアッ』。
 作中、「ラスベガスは大人のための遊園地」と作者の浅田次郎氏は言う。ピラミッド、中世のお城、ニューヨークの摩天楼と自由の女神などの形をした巨大なホテル。そのホテルでは、ショーやミュージカルが開かれる。まさに遊園地。
 また、「世界の非常識はラスベガスの常識。世界の非日常はベガスの日常」というとても魅力的なセリフも作中に出てくる。是非一度、そんな世界に飛び込んでみたい、ということで2位とした。

3位は『鴨川ホルモー』。
 言わずと知れた京都。私は修学旅行などで京都に行った。子どもの頃は、寺や街並みを見てもピンと来ないものだが、大人になると「次は京都に行こうかな」なんて気軽に思うようになる。そして、いざ京都に降り立ってみると、情緒深い街並みや寺院の荘厳さにハッとさせられる。
 ラスベガスの派手さとは正反対の、静かな神聖さが存在している。日本人にとって京都はやはり心の故郷なのだ。しかし、実は昨年旅行したばかりなのでここでは3位にした。

4位は『午前三時のルースター』。
 舞台はベトナムのサイゴンで、現在のホーチミン市。ホーチミンと聞くと、人がたくさんいて、ごちゃごちゃしていてカブ(原付)だらけな勝手なイメージがあったが、実際にホーチミンに行ったことのある人に聞いてみると「道を渡るタイミングがわからないほどカブだらけ」とのこと。やはり。
 バイクが好きな私としては、現地でカブを1台調達し、カブだらけの雑踏の中、ベトナム人に混じって走ってみたい。しかし、それ以外は特に私の琴線には響かなかったので4位。

5位は『ガダラの豚』。
 物語内では、キスムから北へ行ったマラキシという町でバルーンサファリ(気球)に乗るのだが、実際にもケニアでバルーンサファリを体験することができる。特にマサイマラ動物保護区のバルーンサファリが有名だ。
 ライオンやゾウなど野生動物を眺める雄大な空の旅はさぞかし気持ちがいいのだろうと思うのだが、個人的に高い所が大の苦手なため5位とさせてもらった。


 今回の選んだ5つの舞台の中で、やはり一番行きやすいのは京都だろう。私自身、『鴨川ホルモー』を読んだあとに、京都に行きたくなり実際に行ったのだ。
 私が行ったときは「ホルモー」なる競技はもちろん行われてなかったが、作中でも登場する京都大学や立命館大学、同志社大学を見ただけで「おお!」とはしゃぎ、鴨川を見ただけで「これがあの鴨川かー!」とテンションが上がった。 日本の歴史において文化の中心でもあり、清水寺や金閣寺など見所満載の情緒漂う京都の街そのものよりも、学生時代に通ったわけでも目指したわけでもない大学や普通の川に、心奪われた。

 小説を読んでから実際にその場所を旅行すると、そういった楽しみ方ができるようになる。そして、その舞台と重ね合わせて、まるで自分がその作品に登場しているかのような感じを覚えるのだ。また、他にも小説は街のさまざま側面を教えてくれる。
 好きな作品の舞台に行き、自己流の楽しい旅行プランを立ててみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)


【連載:月イチ田中の本まみれ 過去のアーカイブ】
第4回:小説の舞台で行ってみたい場所ランキング【架空編】
第3回:小説に登場する美味しそうな料理ランキング
第2回:小説に登場する魅力的な女性キャラクターランキング
第1回:話題の映画の原作本ランキング