「mixi年賀状」が東京インタラクティブ・アド・アワード2009でグランプリに輝いたとき、このプロジェクトに関わってきた博報堂クリエイティブディレクターの須田和博氏をはじめ、関係者の誰もが「そうキタか!」と意表をつかれたといいます。同時に、一般の人は「あれのどこが広告なんだ?」と思い、広告クリエイターたちも「どこに素晴らしいクリエイティブがあるのだ」と首を傾けたそうです。

 そもそも「mixi年賀状」は広告のカタチをしていないし、広告表現に特化しているものでもありません。サイトのインターフェイスもいたってシンプル。サービスとしても、登録ユーザーのマイミク(mixi内の友達)に、リアルな年賀はがきを送ることができるというもの。言ってみればそれだけなのですが、"それだけ"のサービスがこれまでになかったことが受賞の理由。それをメディアと組んで開発したところに、「mixi年賀状」が「東京インタラクティブ・アド・アワード」でグランプリを受賞した画期的な意義があるようです。

 考えてみれば、これだけのネット時代を生きている若者に、「紙の年賀はがきを出してください」と素晴らしい広告表現で伝えたところで、どれだけの人が書いてくれるかは検討もつきません。「年賀状っていいねぇ、やっぱり出した方がいいねぇ」とは思ってくれるかもしれませんが。そんな中、ネット世代が「年賀状を出しやすくなる方法」を考えた時に出てきた答えが「mixi年賀状」。

 このサービスを利用すると、ホント簡単に年賀状が出せてしまいます。まず、相手の住所どころか、顔も本名も知らなくてOK。「ふだんmixiでお付き合いのあるこの人に年賀状を送りたいぞ」と思えば、年賀状のテンプレートとマイミクを選びます。すると相手に年賀状申請のメッセージが届き、了承して自分の住所を入力すると、絵柄に一言が添えられた年賀状が届く仕組み。絵柄はキャラクターものだったり、おしゃれなものだったり、タレントが描いた絵だったりと、500種類にものぼります。そこに選択肢があることのほうが、従来のマス広告における、いわゆる広告表現よりも、よっぽど大事だったのです。そうでないとユーザーは「使おう」という気にならないから。結果的にこのサービスは、メディア会社であるmixiと手を組んだ年賀はがきの販促プロモーションとなり、70万枚の申し込みがありました(2009年用)。

 「使ってもらえる広告」
 
 自分をぐんと低くして、相手の都合をじっと思いやり、そっと身近な位置に寄り添って、喜んでもらえるように行動する−−。ある種、日本人らしいコミュニケーションの作法が、今、広告の最前線で注目されているようです。



『使ってもらえる広告』
 著者:須田 和博
 出版社:アスキー・メディアワークス
 価格:780円
 >>表紙画像つきの記事を見る


■関連記事
銀座から最初に撤退する企業はどこ?〜『ファストファッション戦争』(2010年3月1日01:30)
NOと言える余地を残すお願いの仕方〜『「バカ丁寧」のすすめ 』(2010年2月28日00:54)
ごまかし上手は仕事上手?〜『上司やクライアントの見る目が変わる ごまかしの心理術』(2010年2月27日02:13)


■配信元
・WEB本の通信社(WEB本の雑誌)→記事一覧