今、テレビは空前の「コント冬の時代」である。かつては、売れっ子の芸人が必ずコント番組を持っていた。毎週大掛かりなセットを組んで、本格的なコントを披露していたのだ。だが、この不景気である。制作費削減は避けられず、大掛かりなコント番組はテレビから姿を消した。
 
 とはいっても、コントを作る芸人がいなくなったかといえば、そうではない。若手芸人のなかにも、コント志向を貫いている芸人はいる。なかでも、お笑い評論家のラリー遠田氏が注目しているというのが、新感覚の秀作コントを量産しているジャルジャルだ。

 2003年に後藤淳平と福徳秀介によって結成されたジャルジャル。06年に「オールザッツ漫才」で準優勝したのを皮切りに「NHK新人演芸大賞」「ABCお笑い新人グランプリ」などで上位をさらった。

 二人がみせるコントはシュールとベタが同居したようなもの。衣装や小道具をほとんど使わず、黒のシャツとベージュのパンツというスタイルで舞台にあがる。
 
 代表的なコント「理解不能者〜野球部入部〜」は、後藤が演じる野球部の先輩が、福徳演じる新人野球部員にバットの振り方を教えるといったもの。だが、福徳はいくら教えてもらっても、バットを握るということが理解できず、赤ちゃんを抱くようになってしまうなど、見当違いの間違いを繰り返してしまう。
 
 この手の「意識のずれ」を盛り込んだコントというものは、他でもみられるが、ジャルジャルが秀でているのは、巧みな演技によって「バットの持ち方がわからない」というナンセンスな設定に、リアリティをもたせているところとラリー遠田氏。

 このコントでは、バットを握ることのできない後輩部員の福徳に、先輩部員の後藤が終始もどかしいそぶりを見せる。すると、ある瞬間を境に、今度は福徳のほうがイライラしだすのである。「なんで俺よりもイライラしてんの?」と後藤にツッこまれるのだが、このやりとりを挟むことで、福徳が後藤をからかっているのではなく、本当に理解できていないことが伝わってくるのだ。
 
 「バットの持ち方がわからない」という、本来あり得ないはずの設定が、リアルに見えてくるのがこの瞬間。一見単純な構成のネタの中に、こういう高度な仕掛けをさりげなく忍ばせてくるあたりが、ジャルジャルが非凡といわれる所以なのだ。

 ラリー遠田氏は自著『この芸人を見よ!』の中で、ジャルジャルだけでなく、松本人志、タモリ、サンドウィッチマン、小島よしおなど、45組の人気芸人を批評している。あの芸人がなぜ面白いのかをロジカルにひも解くことで、より笑いが深まる一冊といえる。



『この芸人を見よ!』
 著者:ラリー遠田
 出版社:サイゾー
 価格:1365円
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