(C)2008  VILLAGE ROADSHOW  FILM(BVI)LIMITED
 全国の映画館スタッフの投票によりスクリーンで観てほしい映画のベストテンを決める「映画館大賞」。日本で初めての映画賞「映画館大賞」が2009年に発進し、2回目となる「映画館大賞2010」にクリント・イーストウッド監督の「グラン・トリノ」が選ばれた。

 「映画館大賞」は、全国の書店員が読んでほしい本のベストテンを決める「本屋大賞」に続けと発足された、興行収入や各映画賞にとらわれない“生の声”が決めるランキング。「映画館大賞2010」は、2008年12月から2009年11月末日までの公開作品を対象に全国の150館もの独立系の映画館が投票し決定した。

 特別部門の「あの人の1本」は、映画監督の阪本順治、女優の中谷美紀、俳優の竹中直人の参加により、バラエティに富んだ、それぞれの最も印象に残った1本が選出。特集上映・リバイバル上映された旧作のうち最も鮮やかに蘇った1作を決める「蘇る名画」は、映画評論家の山根貞男が選定しており、個性的なラインナップが光る結果となった。

 4月17日(土)〜24日(土)には渋谷・シネマヴェーラにて上位作品と各部門のセレクションの特集上映が各日ゲストを迎えて開催される。

映画館大賞2010ベストテン作品(以下20位まで)

1位:「グラン・トリノ」クリント・イーストウッド監督
2位:「ディア・ドクター」西川美和監督
3位:「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」ケニー・オルテガ監督
4位:「愛のむきだし」園子温監督
5位:「劔岳 点の記」木村大作監督
6位:「サマーウォーズ」細田守監督
7位:「母なる証明」ポン・ジュノ監督
8位:「スラムドッグ$ミリオネア」ダニー・ボイル監督
9位:「イングロリアス・バスターズ」クエンティン・タランティーノ監督
10位:「沈まぬ太陽」若松節朗監督
11位:「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」
12位:「空気人形」
13位:「南極料理人」
14位:「チェンジリング」
15位:「レッドクリフ Part2 ―未来への最終決戦―]
16位:「レスラー」  
17位:「ウルトラミラクルラブストーリー」
18位:「ROOKIES ―卒業―」
19位:「チェイサー」
20位:「マンマ・ミーア!」

「あの人の1本」3名の著名人が選ぶ、2009年に最も印象に残った1本

阪本順治(映画監督) 
「ポチの告白」高橋玄監督
骨もあり、
肉もあり、
意志もある。
声もあり、
匂いあり、
姿(菅田)あり!

中谷美紀(女優)
「アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち」 サーシャ・ガバシ監督
「夢を叶えるには人生は短すぎる。しかし、夢を諦めるには人生は長すぎる」と、ある監督は言いましたが、この作品はまさにそんな映画でした。ヘヴィーメタルなんて全く好きではありませんでしたし、始まって5分程で劇場を出ようか否か迷ったほど、退廃的で過剰なパフォーマンスに嫌悪感を抱いていたにもかかわらず、いつの間にか中年男たちが必死で夢を追いかけ生きる姿に引き込まれ、最後にはポケットティッシュを使いきってしまいました。

竹中直人(俳優)
「永遠のこどもたち」 J.A.バヨナ監督
2009の映画はスペイン、メキシコの合作、そしてギレルモ・デル・トロプレゼンツ、J・A・バヨナ監督「永遠のこどもたち」だ。「パンズ・ラビリンス」を観てデル・トロの大ファンになったぼくだけど、まずはタイトルとポスターに惹かれ「ちょっとホラーぽいのかな…?」なんて思いだけでなんの情報もキャッチせず銀座にある劇場に足を運んだ。そして映画が始まってすぐ、スクリーンに映し出される映像の美しさにぐいぐい引き込まれて行ったのだ。怖い、間違いなくめちゃくちゃ怖い…しかしそれだけではない。ぼくは結果「この映画は絶対、観なきゃダメだっ!」なんて言いながら友人を連れ、三度も劇場に足を運んでしまった! キャストひとりひとりのお芝居が素晴らしい! そしてバヨナ監督の紡ぎ出す映像の美しさ、ロケーションの素晴らしさ! 物語の基本は行方不明になった7歳の息子を探す母の物語である。その母親役を演じるベレン・ルエダという女優の演技が見事だ! 美しく、しっかりとした佇まい、そして彼女の力強い眼差し! 母なる愛! ベレン・ルエダがあってこそこの映画はよりパワーに満ち、愛に溢れる。霊媒師役で登場するジェラルディン・チャップリンのリアリティ溢れる見事な演技! これはすごい! もうハラハラドキドキ! しかし、最後には涙が溢れ止まらなかった! なんと愛に満ちた映画だったろう! 何度でも観たくなる映画だ! J・A・バヨナ素晴らしい監督と出会えて本当にぼくはうれしい!

蘇る名画

「かも」ニュープリント('65年)関川秀雄監督
選定者/山根貞男(映画評論家)

映画館大賞