哲学者・ニーチェが若い頃に見せていた「意外な素顔」とは

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 『超訳 ニーチェの言葉』が思想書としては異例のベストセラーとなっている。

 本書は19世紀の哲学者フリードリヒ・ニーチェが語った様々な言葉を抜き出した格言集だ。ニヒリズムに代表されるニーチェの思想だが、本書には生きるための明るく、力強い言葉が詰め込まれている。

 出版元のディスカヴァー・トゥエンティワンによれば、発売1ヶ月で10万部を突破、さらに2ヶ月で21万部とその勢いは留まるところを知らず、読者層もニーチェにあまり触れたことのない20代が4割を占めるなど、新たな世代にニーチェという哲学者を浸透させているようだ。

 さて、若い人々の心をつかんでやまないニーチェ。
 偉大な哲学者であることは変わりないが、その彼の人生からちょっと意外なエピソードをご紹介しよう。


・自分の好きな作曲家がいかに素晴らしいかを示すために論文を書いて干される

 初期ニーチェにおいて重要視される人物が2人いる。作曲家・ワーグナーと哲学者・ショーペンハウアーだ。
 ワーグナーとの親交はよく知られているが、その頃に書かれたニーチェの処女作である『悲劇の誕生』は実は、ワーグナーに心酔過ぎてワーグナーを賛美するために書かれた論文であるいう。
 筑摩書房から出版されている『ニーチェ入門』の中で、著者の竹田青嗣氏は『悲劇の誕生』はギリシャ文学論に見えて実は「この論文のテーマは、ひとことで言って「なぜワーグナーの音楽は素晴らしいか」、「いかなる理由でワーグナーは天才か」ということ」であると述べている。

 もちろん、『悲劇の誕生』は学問の世界から痛烈な批判を浴びてしまい、その年の冬に開かれたニーチェの講義を聞いた人は、わずか2名であったという。

・決別した親友が亡くなった日に歴史的名著が完成する

 同じくワーグナーとのエピソード。
 ニーチェの代表作はやはり『ツァラトゥストラ』だが、この第一部が完成した1883年2月13日にかつての親友・ワーグナーが死去している。

 『悲劇の誕生』や『反時代的考察』でワーグナーに心酔する姿を見せていたが、後にワーグナーの音楽に低俗さを覚え、決別していた。
 ニーチェはこの出来事に運命的なものを感じたという。


 後世に多大な影響を及ぼし、現在も人を魅了し続けるニーチェ。
 『超訳 ニーチェの言葉』でニーチェに興味を持ったなら、筑摩書房から出版されている『ニーチェ入門』やNHK出版から刊行されている『ニーチェ どうして同情してはいけないのか』(神崎繁/著)といった入門書がお勧め。また、ちくま学芸文庫の『ニーチェ全集』はニーチェの作品が19冊の文庫に収録されている。それでも飽きてしまったら原書などにも挑戦してみるといいかもしれない。ニーチェの新たな顔が発見できることだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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