味は規格野菜と同じ

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   曲がったきゅうり、小さめのにんじんといった「規格外野菜」が最近、注目されている。形は不揃いでも味は普通の野菜と変わらないので食べる分には問題がなく、安いので食費を節約している主婦には大助かりだ。

   野菜は出荷の際に大きさや色、形などで振り分けられる。国が出荷規格を定めていたが、流通の合理化や消費者ニーズの多様化で2002年3月に廃止された。それ以後は、全国農業協同組合連合会(JA)などで個別に定めている。規格外野菜の一部は加工食品として流通しているが、大部分が店頭に並ばずに廃棄処分され、食べられるのに捨てられる「食品ロス」の問題になっている。

6割が「規格外を購入したことがある」

   ところが09年夏に長雨の影響で野菜の収穫量が減って価格が高騰すると、農林水産省はJAなどに09年8月11日、規格外品を出荷するよう要請した。これがきっかけになって規格外野菜の市場が広がっている。

   日本政策金融公庫が規格外野菜・果物に関する消費者意識調査を20〜60歳代の男女2000人に行ったところ、「規格外の農産物を購入したことがある」と答えた人は全体の60%にのぼった。その理由は「品質のわりに価格が安いから」が64.8%、「規格品と味が変わらないから」が55.5%。また、「購入したことがない人」(40.1%)のうち「今後は購入してみたい」と思う人は65.5%に上った。調査は2010年1月に実施し、3月2日に発表した。

   有機野菜などをネットで販売している「オイシックス」は、にんじん、きゅうり、エリンギなど24品目の「ふぞろい野菜」を通常商品の3割安で売っている。01年2月に「ふぞろい野菜」の販売を開始してから利用者は年々増加し、09年12月31日〜10年3月4日の売上げは前年同期(09年1月1日〜3月5日)と比べて30%増だった。

   広報担当者は、

「形や見た目よりも、安心できる、おいしい、使い勝手がいいという点を重視されるお客さまに好評です。安いので不景気の影響もあって伸びています」

と話している。

野菜価格の下落を招く?

   スーパーマーケット「マルエツ」も08年12月から規格外品を「わんぱく野菜」として毎週火曜日に全店舗で売り出している。契約農家から仕入れたジャガイモ、タマネギ、ニンジンなど約7〜8品目。通常に比べて5〜7割程度安い。売り上げは前年比約2割増と伸びている。

   一方、消費者とは対照的に、生産者は複雑な心境だ。

   きゅうりの生産量が日本一を誇る群馬県のJA全農ぐんま園芸担当者は、

「1人当たりの野菜の消費量は変わらないので、規格外野菜が売れれば、いいもの(規格野菜)が売れなくなる可能性もあります。そうなれば収入が減ってしまい、一概に喜べません。しかし消費者は安い規格外野菜を求める傾向にあり、板挟みになっています」

と打ち明ける。

   農林水産省生産流通振興課の担当者も、

「野菜の生産量が減った09年8月頃は規格外でも高く売れ、JAなどに売るよう要請しました。でも元に戻った今、規格外を売れば流通量が増えますので、全体の価格を下げてしまいます。規格外品ブームがじわじわと効いて、価格に与える影響を考えると怖いですね」

といっている。

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