正しく数字を分析することで見えてくる「本当の日本の未来」とは(1)

写真拡大

 ベストセラーとなり、ビジネス書大賞ブロガー・マスコミ賞を受賞した『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者・神永正博さんが、ついに続編を上梓した。
 統計学を駆使し、未来の日本予測を検証する『未来思考 10年先を読む「統計力」』(朝日新聞出版)では、「日本は本当に少子化へ向かうのか?」「本当に大地震は起きるのか?」など、世間の話題になっている問題に深く切り込んでいる。
 そんな神永氏へのインタビュー第1回目となる今回は、統計学の重要性、本書を通じて伝えたいことを聞いた。
(新刊JP編集部/山田洋介)


◇  ◇  ◇


■統計学で未来が予想できる!?

―本作『未来思考 10年先を読む「統計力」』は、前作『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』の続編という位置づけになるそうですが、前作とはどのような点で違いがありますか?

神永「(前作の)『統計思考力』は、統計を通して、社会問題、経済問題をどう読むかという点に主眼があり、いわば教科書的な書き方になっています。本作では、教科書ではなく、統計思考力で日本の現状とこれからを見るとどう見えるか、という点に主眼があります。確率・統計の説明も最低限は行いましたが、この点が最大の違いですね。」

―神永さんが本書で目指されたのはどのようなことでしょうか?

神永「できるだけきちんと統計的、学問的な証拠を積み上げていって、ここまではほぼ間違いないだろう、という線を引き、冷静な議論を行うためのプラットフォームを構築することです。
議論というと、対立して闘う、といったことが連想されるかもしれませんが、みながみな対立に耐えられるほど精神的にタフなわけではないでしょう。たとえ学問レベルの話であっても、論戦はとても消耗します。
みなさんは、『学者は冷静に議論している』と思われるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。自説を否定されれば怒りますし、辛辣なことを言われればがっくりします。私もニュースを見ると怒ってばかりいます。こんなことが許されていいのか!などと思うことはしょっちゅうです。全く冷静になれていません。
人間は感情の動物です。データをいきなりぶつけられるとびっくりしますし、感情的な抵抗も出てしまいます。できるだけ気持ちを汲み取りながら、どう書けば抵抗なく事実を伝えられるか。これが大問題なのです。事実を受け入れられるように書くこと。これが目標です。本書でこれが果たされていればよいのですが。」

―“統計学で未来を予測する”という、ある意味大胆なテーマではありますが、執筆にあたってどのような点に苦労されましたか?また、どのようなことに工夫されましたか?

神永「私の予測は、非常に慎重なスタイルです。予測の多くは、既存の学問分野で行われていることを整理しただけ、ともいえます。
しかし、予測はあちこちの学問分野でバラバラに行われているので、まとめて見るとどうなるか、ということはあまり書かれていません。
統合作業を行うには、そうした学問領域を横断する必要があります。ここは意外に難しいところで、専門家の立場ではあらすぎると思われる分析でも、普通の人が読んだら細かすぎるということがありうるのです。このギャップを埋めるのが、執筆時間の半分近くを占めたと言っても過言ではありません。」

―本書で、特に読み手に伝えたいと考えていることは何ですか?

神永「『現実を知ることは、心の平安と両立する』ということです。データ満載の本らしくない話なのですが、本書を読んで、読者の気持ちが癒されるといいなあ、と思っています。報道の影響かと思いますが、少子化と聞いたら、『これは問題だ!』と思うような回路が、みなさんの頭の中にできてしまっているのではないでしょうか。まるで、山と聞けば川、と答えるように。これは、いわば頭が凝っている状態ではないかという気がします。本書で、コリをほぐしてもらえたら、と思うのです。
日本の状況は、もちろん大変ではあるのですが、『問題』をよく見てみると、部分的には仕方のないこともあるなあ、と。
そう思えると、ちょっと気が休まるような気がします。少なくとも私は、調べてみて、そう思う部分がたくさんありました。ある程度、現状とこれからを冷静に受け入れた上で、『さて、本当の問題はなんだろう』というふうに、建設的な議論ができるようになったら嬉しいですね。」

第2回「ベーシック・インカムは労働問題に有効」へ!


【関連記事】
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の著者はどんな人?(第1回)
100万部突破のベストセラー著者が語る、子育ての極意(第一回)
小売業界不振もお構いなしに伸び続ける“通販”その成功の秘訣を聞いた(第一回)

本書をポッドキャスト番組「新刊ラジオ」でも紹介中!ブックナビゲーターが分かりやすく解説します!