「奇跡のリンゴ」を育て上げた木村秋則さんの素顔とは?―“親友”山崎隆さんの証言

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 “けやぐ”という言葉を知っているだろうか。
 “けやぐ”とは津軽地方で使われる方言で、標準語になおすと「親友」と言っていいだろう。

 無農薬、自然栽培でリンゴを育てるという、前代未聞の偉業を成し遂げ、さまざまなメディアで取り上げられている木村秋則さんの新刊『リンゴの絆』(主婦と生活社)は、この“けやぐ”という言葉が最重要キーワードとなっている。

 自然栽培のリンゴを育て上げる苦労は、木村さんのこれまでの著書を読めば分かるだろう。しかし、そうした苦労を乗り越えるために木村さんには、人生に欠かすことができない“けやぐ”がいた。
 木村さんの1歳下の幼馴染み・太田昭雄さんと、木村さんの「奇跡のリンゴ」を世に広めたレストランのオーナーシェフ・山崎隆さん。この2人は木村さんにとって大切な“けやぐ”である。

 『リンゴの絆』で描かれる木村さん、山崎さん、太田さんの3人のエピソードからは、人との絆が薄れてきているといわれる現代において、これほど深く、暖かく、そして強い絆はないのではないかと思わされる。

新刊JP特集ページでは山崎隆さんのインタビューを音声で配信中!

 今回は、木村さんから“来世も一緒にけやぐ”と言われている山崎隆さんにインタビューを行い、木村さんとの出会いや木村さんとはどのような人なのかを聞いてみた。
(インタビュアー・記事/金井元貴)


◇   ◇   ◇


―それでは、まずは山崎さんの自己紹介からお願いできますか?

山崎「はい、山崎隆と申します。青森県弘前市にあります『レストラン山崎』というフランス料理店を経営しております。また、ほかに『パティスリー山崎』『ビストロ・ル・コショネ』『西洋茶寮サロン・ド・甚兵衛』といった支店も経営しております。仲間と一緒に弘前をフランス料理の街にしようということで、地元の安全な食材を使ったフランス料理を通じて街おこしをしています」

―『リンゴの絆』を読ませて頂いたのですが、本書で描かれている人間関係の暖かさ、優しさが非常に印象的でした。木村秋則さんとの出会いについて教えて頂けますでしょうか。

山崎「最初の出会いは新聞記事の中に、安全な農業に取り組む生産者の集まりが生産者の畑で消費者と行われ、それに木村秋則さんという方がエールを贈ったという記事がありましてですね、そのリンゴ農家の木村さんのくだりにひっかかりまして、電話番号を聞いて電話を差し上げました。そして、木村さんのご自宅を訪ねて色々お話をうかがいまして、とても感動し、“この人はすごい人だな”と思ったのが最初ですね」

―最初に木村さんとお話されたとき、本書では大根のエピソードが載っていましたが、他にどのようなことをお話されたのでしょうか。

山崎「当時の木村さんの畑は、リンゴが実をつけて間もなくの頃で、周りの木はまだ枯れていました。その畑の中には生活するための野菜畑がありまして、その野菜畑の側に腰をかけて話し込んだんです。そのとき話したのは、木村さんの生き様ですとか、リンゴの作り方、野菜の生態などですね。その他にも、“トマトは刺身である”とか“トウモロコシは一生懸命すりおろしてスープにしたらいい”とか、そういった話をしました」

―木村さんの第一印象はどのようなものでしたか?

山崎「ゆっくりはっきりと語る方で、野菜やリンゴだけではなくて、人生観、物の見方というんですかね、“これはこうだからこうなんだ”という風にはっきり筋道を立ててお話をする方で、どんどん話の中に引き込まれていきました。
目が澄んでいて、外見はお百姓さんなんですが、科学者だったり哲学者だったりといろいろな面を見せてくれます。初めて会った日は2時間くらい話を聞いたと想いますが、その中でいろいろな断片が見えてくるんですよ。今まで自分が会った人の中で、木村さんのような方はいなかったですし、とても感動したのを覚えていますね」

―今の木村さんについては、どのような方だと思っていますか?

山崎「同じですね。当時とあまり変わりません。もう20年くらいお付き合いしていて、(木村さんは)人前に出たり、テレビに出たりしていますが、全然偉ぶらないですし、相変わらずの付き合いをしています。ただ、忙しくなりすぎてかわいそうだと思います。なかなかゆっくり酒を飲む時間もなくなってしまって、まあ会えば飲むんですが(笑)。でもやっぱり、ずっと想い続けてきた自然栽培、農薬も肥料も使わない自然栽培をもっといろんな人、世界に広げていくというのは全く変わりませんね。
実は木村さんの想いは環境問題と直結しておりまして、木村さん自身が農薬によって食べ物が汚染されるとか、そこに住む人たちが危険にあうという問題をずっと見ていたんです。そして、私も小さい頃、父が養豚場をやっておりまして、餌やりが私の係だったのですが、その餌に含まれる抗生物質やホルモン剤などによって家畜がどんどん変になっていく姿を目の当たりにしていたんです。
そういったことが平気で行われている現状を変えなければいけない。その想いがより強くなりまして、人がどんどん木村さんの影響を受けていくものですから、そういった人たちにもお願いをしまして、みんなで環境を良くしていこうと。そういう方向に向かっていますね」

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